谷津川 本流

 当初計画では2パーティに分かれての遡行であったが、1名が急きょ参加を取りやめたため7名一緒の行動となった。 というのは公式記録の建前で、前夜に飲みすぎて出発が遅くなったのでパーティ分けできなかったのでした…。 みなさん、S社の「おいしいワイン。」にはご注意を! 

 今回は恒例の「わらじ初(ぞめ)」。 人数が多いのでリーダーのヒロPが参加者の力量を鑑み、またアクセスを考慮して選んだ沢だ。 計画段階から最後をどうツメるのか意見が分かれた。 熊倉山ピーク(1426m)には関心がなかったので、ツメと下山路はなるべく簡単に早く済ませたい。 心で思っていることはみんな同じであったが、奥の二俣を左に行くか右をツメるか、悩んだ末に右俣に決定した。 

 お世話になった道の駅あらかわを三台乗車で出発。雲ひとつない青空!

 熊倉山登山口駐車場(385m)から熊倉山白久林道(登山道)に入り、最初の営林署標識(No.2)で入渓した。白久林道は土砂崩れのため2011年から通行禁止になり、現在は廃道になっている。

地獄谷の出会(500m、最初の二俣)。


七つ滝に到着。高さがあってすらりとした女性的な美しい滝だ。中間地点にスリングが掛かっているように見える。あそこまでどうやっていくのだろう?

12m二条滝は水流左側を信さんがハイステップを決めて一段目を登ったが、中段の緩い斜面がヌルヌルで次の一歩が出せない。信さんにはセミになってもらって、勇さんが右から巻いてロープを出した。

奥の二俣に到着。 左に進めばゴルジュ、右は100mも登れば廃道に出るはず。記録を読むと厳しいことが書いてあったが、廃道といっても元は登山道。 そこまで行けば何とかなるだろう、と軽い気持ちで考えていた。歩き出したのは11:30。この時点では「早く降りて3時過ぎには温泉に入りたいね」と軽口をたたいていた。 NASさんが最後の水を汲み、ザレてる急登をツメて行く。

左手には石積の窯のようなものも現れ、人の手が入っていた往時が偲ばれる。 

石のザレから土崖の急こう配に変わり、よつんばいになって這い上がっていく。 這い上がっているのだが一向に廃道が現れない。 地形図では1000mを超えて右にトラバースすれば廃道にぶち当たるはず。 しかし見上げると岩壁も出現し始めてきた。 右へ右へ逃げて放置された伐採丸太を乗り越え、ようやく登山道にでた。 営林署の標識もあった。No.14とある。 ヤレヤレ。 わたしはアプローチシューズに履き替え、NASさんは隠し持ってきた缶ビールを飲もうとした。 が、長年の経験か動物的な勘が働いたのか分からないが、飲むのを思いとどまった。 正解であった。 思いもよらないことであったが、ここからが長かった。 地獄谷の源頭を渡り、標識No.11を過ぎた地点まではスムースだったが、そのあと道を失ってしまった。

 地形図によると地獄谷の源頭を渡った直後に廃道上の分岐があるはずだったが、行きつ戻りつしてもそれらしき場所は見つからない。GPSで見当をつけて藪の中にそろりそろりと下り始めた。ところどころにテープはあるのだが、作業用目印のようで参考にならない。途中に大きな崩落地がありそこらじゅうにテープがあった。

  急斜面の藪や樹林帯をトラバース気味に北に歩いて3時間以上が過ぎた。横移動をしているので少ししか下降できていない。小さな落石も頻発し、鹿から身を守る植生の影響か小枝の多くにはトゲがあり痛い。いい加減うんざりだ。そんなみんなの気持ちを代弁して勇さんが声を上げた。 「もうロープを出して沢へ降りよう。」 「ダメッ! 次の尾根まで行って決める。」 と、トップを行くうど子さんが間髪を入れず叫んだ。 全否定された勇さんは沈黙し、瞬間であったが剣呑な雰囲気がわれわれを包んだ。 

 結局、勇さんが降りようと言った場所から数分で小さな尾根を越えて登山道(廃道)に出た。営林署の標識No.6があった。 下の画面キャプチャーは、道を見失った直後からスタートさせたGPSのトラッキングだ。

 下山してからうど子さんがこう分析した。 「とっくに無くなっていた地形図の道を苦労して地形図通りにたどったのです。」 ロープワークやクライミング技術も大切だが、ルーファイが一番重要だと今回思い知らされました。 

( 7:47 入渓 ~ 8:12 地獄谷出会 ~ 9:14 七ツ滝 ~ 11:01 三俣 ~ 11:27 奥の二俣 ~ 16:15 駐車場 )



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沢登り山岳会 遡行同人 梁山泊 - 山をまるごと楽しむ!

遡行同人 梁山泊は「沢登り」を中心に、山スキー・岩登り・アイスクライミング・雪稜登山など、四季を通じて山をまるごと楽しむ山岳会です。拠点は東京で、安全登山を心がけており焚き火、山菜&きのこに興味がある方、未経験者・初心者も大歓迎です。