悠久の八久和(八久和川~出谷川東俣沢)

2015年8月20日~25日 メンバー:オベ(記)、ノブ


事の起こりは、年末に湯河原幕岩へ、シンちゃん・ノブさん・僕の3人で行った帰りの、
居酒屋『にのみや』での打ち上げ時の話。7年前の八久和川の話をすると、2人は大いに盛り上がり、夏にはぜひぜひ行きたいという。

しかし、震災からこの方、大きな沢に行っておらず、この1年は山にも行かず、ペンライト振って“ファイバーワイポー”なんて喚いてばかりだった僕は正直自信がなく、2人からの

「今年は八久和っすよね」のリマインドに
「お、おぅ、ま、まぁ?ね」とお茶を濁していた。
ペンライト振ってぇ~ 
ファイバーワイポー!!


そのうち、シンちゃんが北の大地に飛んで行ったことをいいことに、この話はフェードアウトさせようと目論んでいたのだが、ノブさんの記憶力はシツコく、意思は固く、

「行きましょう、八久和、行きませう!!」
と、ハナイキ荒く(笑)。


聞けば、主力メンバーは諸事情により、今年は大きな沢はいかないという。
じゃぁ今年はワシが行くか!という、ほぼ勢いとノリだけで八久和行きを決めた。
体力、天気、その他モロモロ心配だが、何とかなるだろう!と、根拠のない自信と装備一式をザックに詰め、19日、ノブさんの待つサイタマに向かったのだった。

【20日】

朝、お世話になる旅館「朝日屋」さんの門をたたく。前回は、入山地点の八久和ダムまで、この宿の人に車で送ってもらい、遡行後、下山地点の泡滝ダムからバスで宿まで戻り、一泊して帰京した。現在、泡滝ダムからのバスは廃止されており、下山後のアシがネックになる。ダムから宿までおよそ12km。歩きは勘弁してほしい。


朝日屋のお兄さんは、僕の事を覚えてくれていた。泡滝ダムまで車でついて来てくれて、僕らの車を駐車し、そこから八久和ダムまで送ってくれるという。かたじけない!これで、下山後のアシが確保できた。


泡滝ダム駐車場に車を停め、お兄さんの車で、鱒淵林道から八久和峠経由で八久和ダムの車留まで送ってもらう。前回は草ボーボーのため手前までしか入れなかったが、今回はしっかり刈り払いがされている。お兄さんを見送り、遡行準備して、さあ出発だ。


前回は、フタマツ沢渡渉点のかなり前から入渓したが、今回は忠実に踏跡を辿る。ノブさんは、重荷でのアプローチに、かなりお疲れのご様子。初日だしノンビリ行きましょう。踏跡歩きにいい加減飽きてきた頃、渡渉点に到着。赤テープベタ貼りで間違えようがない。しかし、長いねぇ。前回同様、早く水に入れば良かった。ともあれ、八久和に再会できたヨロコビを噛み締めつつ、遡行開始。

いよいよ入渓

清く、重く、幅広の流れは変わっていない。ヘツリ・泳ぎで進んでいく。水量は多くないが、なかなか歩が進まない。ノブさん、いささかウンザリ気味か。やっとのことでカクネ沢出合を少し過ぎた台地に今宵の宿を求めたのは、日没ギリギリだった。前回に比べ、ちょっと距離が伸ばせなかったが、今日はここまで。入渓後から小うるさかったアブの攻撃は大したことがなかったが、羽蟻の大発生で発狂しそうになる。ノブさん渾身の焚火を囲み、ベーコンやらトンテキなどの重い食糧を平らげ、小宴会して就寝。
<八久和ダム9:40~フタマツ沢先渡渉点14:30~カクネ平(幕)18:30>


【21日】
今にも泣きだしそうな空模様の中、出発。歩き出して間もなく、ウスヒラの群生を見つけ、もう少し脚を伸ばしておけばよかったねぇと残念がる。
長沢、三百軒沢、栃ノ木沢と、多くの支流を越えていく。前回巻いた栃ノ木沢も泳いで突破することができたが、ここから始まるゴルジュ帯から、水量は前回より多めに感じるようになる。
茶畑沢から大ハグラ石滝の区間は、前回なんなく突破したのだが、今回は流れが強くて足を入れる気にならならず、巻きにかかる。が、ルート取りに苦戦し、石滝を越えた後は、30mの懸垂で沢に戻る。このあたりから、空がシクシクし始めて、以降、降ったり止んだりの天気となる。気が滅入るわぁ。
いよいよ自然プールに到着。やはり、流れは早く、重そう。アッサリと巻きにかかる。巻きの途中で雨が本降りになり、こんなところでビバークは論外!と先を急ぐ。
なんとかゴルジュ帯を抜け、日没を待たずに、兵七沢出合手前の絶好の場所にタープを張った。設営中、ヤブ蚊の大群がヒジョーに鬱陶しい。焚火もできず寂しい限り。タープの下に潜り込み、まずはノブさん持参のマルタイ棒ラーメンを食べ、落ち着くことに。五臓六腑に染み渡る旨さで、二人とも少し元気になった。この後、いつもの宴会・就寝。
ヤブ蚊の大群は、夜中から朝にかけ、我々に猛攻撃を加え、痒みで発狂しそうになる。
夜半過ぎに、雨は本降りとなった。
<テンバ08:00~長沢出合09:00~三百軒沢出合10:00~栃ノ木沢出合11:00
~茶畑沢出合13:00~自然プール14:00~兵七沢出合(幕)16:30>


【22日】
目を覚ますと、雨がシトシト降っていて、本流の濁りも強い。進めないこともないが、無理して突っ込む度胸も技量もなく、1日停滞を決める。相変わらず蚊がうるさいので、タープの軒下にミニサイズの焚き火を起こし、蚊遣りにする。
蚊遣りの焚火。


午後になって、雨は降ったり止んだりになってきたので、晴れ間をぬって思い思いに釣りをする。二人とも見事にドボンし、テンバ着を濡らしたが、無事に岩魚をゲットできた。ナメロウ、唐揚げ、イワナ汁に舌鼓を打ち、明日の晴天を祈る。
就寝直前、溢れんばかりの星空が初めて姿を現してくれた。既に熟睡中のノブさんを叩き起し、しばし天然のプラネタリウムを鑑賞。ノブさん、感激!
しかし、この日も、夜中に蚊の大空襲をうけ、発狂しかけたのだった。

【23日】

昨夜の星空がウソのようにパッとしない天気にガッカリ(泣)。だが、幸いにも水量は落ち着きを見せた。昨夜協議した結果、日程を優先させるため、今日はこの先の、沢を横断している登山道へエスケープし、オツボ峰経由で下山することになっているので、何となく気が抜けた中、出発する。
2時間程で、天狗角力取山からの渡渉点を発見。しかし、渡渉点からオツボ峰への登山道が、どうしても、どーしても見つからない!やっとの事で入口らしいところを見つけるも、途中で踏跡は消えている。このまま道を探しながらヤブを漕ぎ漕ぎ登れば、時間切れ必至!藪の中で寝るハメになることは、火を見るよりも明らかである。もうヤブ蚊の攻撃は受けたくない(泣)ので、再度協議し、1日遅くなるがこのまま遡行を続けることにする。いったん緩んだフンドシを絞め直さねば。
ほどなくして、オツボ沢。ここの巻き道、前回は明瞭な踏み跡を快適に越えたのだが、今回は妙な赤テープに騙されて一苦労。ノブさんが跳ね上がった枝にメガネを持っていかれてしまう。沢への下降も悪く、ノブさんには懸垂してもらった。続くコマス滝は、明瞭な巻きで快適に越える。
渡渉点での逡巡に時間を費やした割にはスンナリと、コマス沢先の河原、前回テンバにした場所に到着。広い台地で、目の前には大きな流込があり、枝沢も近い最高の場所。少々早いが、今日はここで幕とする。蚊もアブもおらず、快適に設営が進む。
その後、めいめい釣りに出かけ、ノブさんの泣き尺を筆頭に、二人分としては十分な釣果を得て、大満足のまま夕餉に進む。
今夜は僕が焚火奉行を仰せつかり、舟形の大焚火を作成。ノブさん曰く、「人生で一番の焚火」だそうな。喜んでもらえて嬉しいっす。
目の前の流れ込みで起こるイブニングライズを観ながら、刺身、フライ、ポテサラと、居酒屋メニューに舌鼓を打ち、語り合う。今日は稜線上の小屋でビールを買うつもりだったので、酒は昨日呑み切ってしまっていたが、ノブさんの隠し酒があるので、大焚火で上機嫌なうちに半分分けてもらう。明日は狐穴小屋でビール呑むぞ!!ふと見ると、ノブさんは焚火の傍らで寝てしまっていた。
<テンバ08:00~登山道渡渉点10:00~オツボ沢出合11:00~コマス沢出合14:00
~コマス沢先の台地(幕)14:30>


【24日】
疲れのためか、予定してた時刻には起きらない。ノブさんはまだ爆睡中なので、朝マズメを狙うも不発。昨夜喰いそびれた焼き枯らしを食べ、のんびりモードで出発。
30分ほどで呂滝に到着する。ここは資料とは逆に、左岸を巻く。次の滝も、資料では右岸を大高巻きし、支尾根を乗越すとなっているが、前回同様左岸を小さく巻き、短い懸垂で下降。深瀬さんの残置スリングは、今も健在であった。ふと対岸の下流をみると、資料通りの巻き道の終了点なのか、赤テープが垂れ下がっていた。
ここから先も、岩盤が発達した雄大な流れが続く。そういえば、前回遡行したとき、アイスハンマーをどこかに置き忘れたのにここで気付いたっけなぁ…。なんてことを思い出しながら歩く。ノブさんも一日の停滞と昨日のレストで、元気を取り戻してくれたようだ。
西俣沢が流れ込むあたりから、水が極端に冷たくなる。二人ともネオプレンソックスではないので、なおさら冷たい。
出発時間からして、計画していた中俣沢遡行は時間切れになるだろうとの予測のもと、東俣沢を詰めようと思ってはいたものの、スキあらば中俣に入っちまおうというスケベ根性が、この時はまだあったのだが…東俣沢と中俣沢の二俣に到着し、まず中俣沢に足を入れてみる…つ、つ、冷たい(泣)。東俣沢はというと…温泉みたく温かい。ということで、東俣に決定(笑)
東俣沢は、一つの滝を巻いた以外は、直登可能な滝が20個くらい続く、初級者を連れて来るのにちょうどいい沢で、ザイルを出すこともなくサクサクと高度を上げることができた。沢型に忠実に進みすぎて、最後の詰めは結構な斜面の藪漕ぎとなったが、午後1時に無事に稜線の登山道に到着し、遡行終了!!ノブさんには、中俣沢は宿題となってしまいましたが、次回、シンちゃんと遡行していただければ幸いです(笑)。
ここから登山道を3時間で、待望の狐穴小屋に到着。しかぁし!!!
今山行一番の大問題が発生!!小屋番が下山し、なんとなんと、楽しみにしていたビールが、待ち望んでいたビールが、死ぬほど我慢していたビールが、売っていないのであぁぁる(号泣)。
二階で3パーティー4人が楽しそうに酔い語らっている声を聴きながら、僕たち二人は一階を貸し切って、ペットボトルの底に残っている焼酎をなめながら、ノブさんのアルファ米を食べたのであった。
<テンバ08:00~呂滝08:30~西俣沢出合11:00~東俣沢・中俣沢出合11:30
稜線13:00~狐穴小屋16:30>


【25日】
早く下山して、大鳥小屋でビールを呑もう!と、ガスで視界がない中、勇んで出発!
2時間ほどの登りで、以東岳に登頂。この時、ガスが一時的に晴れて朝日連峰を見渡すことができた。

以東岳を臨む。左は以東小屋

頂上の測量標識


以東小屋で休憩後、直登コースを下降して大鳥池へ!!しかし大鳥小屋にも小屋番はおらず、したがってビールも買えず、大いに落ち込む(笑)
気を取り直して、大鳥小屋からの下山にかかるが、なかなか歩が進まない。ノブさん、いよいよザックが肩に食い込んできたようで、非常にツラそうである。あと少しだよ、ガンバ!!
吊橋を二つわたって、足が棒になりかけた16時前、やっと泡滝ダムが見えた。
泡滝ダム


車まで足を引きづって行き、ガッチリと握手!さぁ、今夜は朝日屋で大宴会だ!!
<狐穴小屋07:00~以東岳09:20~以東小屋10:00~大鳥池11:45~
大鳥小屋12:30~7ツ滝沢橋14:05~泡滝ダム15:50>
宴会料理 
ビール3本で轟沈するノブさん


【雑感・雑談】

1.いやはや、久しぶりの大渓流は疲れましたが、悠久の八久和は優しく受け入れてくれました。
2.朝日屋さんには、あらかじめ言っておいたのですが、1日下山が遅延となり、ご心配をおかけしました。本当にお世話になりました。あ、ビール代の不足分きっちり送金させていただきます。
3.狐穴でお会いしたみなさん、ビールなくてがっかりしすぎて、一階に引きこもってしまいまして申し訳ありませんでした。二階から聞こえる、
「ラーメン屋は漫画を置かないとつぶれる」「寒河江の〇屋はやる気がないが旨い」
などのラーメン談義を子守歌に、階下で眠らせていただきました。
4.今回、二人ともモンベルの沢靴でした。歩きや登攀は、忍者と遜色ありませんが、ネオプレン靴下がはきにくい(というかネオプレン靴下を想定していないのかも)のはいかがなものかと思います。雪渓処理等を行う上で、くるぶしから上だけネオプレンで覆っても、あまり意味がありません。
5.やはり、長丁場の沢は体力が一番モノをいいますね。しみじみと実感
6.大幽では坊主だったけど、今回釣れてよかった(感涙)
7.近頃のアルファ米、旨い!馬鹿にしててすいませんでしごめんなさい。
8.やはり、茗荷と大葉と塩昆布は偉大だ!
9.今回、軽量化と称して、6mm×40mのスリングをザイル代わりに持参しましたが、
懸垂3回くらいで、表皮が両側40cmくらいずつ伸びてしまった。

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沢登り山岳会 遡行同人 梁山泊 - 山をまるごと楽しむ!

遡行同人 梁山泊は「沢登り」を中心に、山スキー・岩登り・アイスクライミング・雪稜登山など、四季を通じて山をまるごと楽しむ山岳会です。拠点は東京で、安全登山を心がけており焚き火、山菜&きのこに興味がある方、未経験者・初心者も大歓迎です。