本名御神楽岳前ヶ岳南壁V字第2スラブ

2017/10/8
メンバー : CLうど子、USAN

やたら長くてややこしい山行場所の名称だけど、あっさりと霧来沢右俣奥壁V字第2スラブと言った方が感覚として分かりやすいような気がする。

沢屋にとっては山の名前じゃなくて沢の名前を言われた方が「あぁ会越。只見のあそこ、室谷の裏ね」と言う感じではないかな。

簡単に言うと、霧来沢右俣(カラ沢)を詰めました?(^^;)


今回、水無流域の別の沢に行くつもりだったけど、メンバーの故障、天候で第2案のこちらに転進。


ここは一昨年も登るつもりで現地までは行ったのだ。(モウガケ沢出合いに泊まったよ。)

当日出発時間になっても雨が止まずに諦めた経緯があります。


また、以前6月に雪渓の鞍掛沢を詰めたことがありました。(ウドがすごかったっけ。)

その下山の時に眺めたド迫力のスラブが心に引っかかってたのです。


なにしろ青空に向かって明るく開けた大スラブは開放的でスケールでかくて何度見上げても「スゲ~ッ!」っとド迫力感が半端ないですからね。

晴れてないとイヤッ!紅葉ならもっと良いな!


ここらへんは大変魅力的な山域なんだけど、我々からすればアプローチが核心かと思う程遠いのね。

若い時のように寝ずに出発というのはもう辛すぎるお年頃。

今回は3連休ですが、初日は雨予報ということもありノンビリ起きてキノコ探しの後モウガケ沢出合いにベース設営、中日に登攀、翌日はまたまたキノコ探しながら帰京というお家芸のまったり計画です。

当初一緒に行くはずだったヒロP、なんと直前に膝が壊れて手術と言うことになり無念の不参加。

あせらずしっかり治してね!(代わりにウマいビール飲んできてあげるyo😵)


7日(雨のち霧雨、曇り、小雨)


某所で起きると周囲はゲートボール大会、バドミントン大会、野球大会会場に一変していた。

(なんかこんなこと前もあったよな~💦)


霧来沢沿いの林道は、一昨年前は落ちていた橋も修復されデコボコの道を登山口まで車で入ることが出来た。

つまりアプローチは30分だ!

足が地面にめり込むんじゃないかというほど酒とツマミをどっちゃり背負って行く。

初日は予報よりは天気が良かったのでキノコ探しに出かけたが、今年は気温が高いせいなのか秋のキノコの出がとても悪く、今宵の鍋にやっとという貧果でありました。


ベースとしたモウガケ沢出合いには焚き火の跡が残ってたが、銀紙の燃えかすがそのまま残されていた。誰だ!💢

我々は焚き火にはそもそも銀紙はくべないよ!

アルミ箔は当然ながら裏が銀色のヤツは全てくべない。

燃え残るものはそもそも何もくべるな~っ!そしてちゃんと後始末してね!


8日(小雨のち晴)


いよいよ登攀の日。

7時ちょい前、小雨ぱらつく中を出発。

山はガスに雲っている。

秋なので物思いにふける、ふり。


少しばかりの重い気持ちを抱えながら、登山道を行く。
無理矢理同行させられたUSANはキノコ探しに余念なし。

それにしてもブナの大木の良い森だ。

霧来沢本流の碧のナメがとても美しい。


登山道が登りに転ずる前の枝沢から本流に下降する。

実際には地形図よりも手前で道は登ってゆく。

鞍掛沢から数えて2本目の枝沢を下ることにした。


今回は靴を濡らしたくないので、いつもなら何も考えずジャブジャブ歩くところも徹底的にヘツリ倒す。

単調な沢もヘツれば面白い。


思ったよりも沢の遡行は長いが、特に悪いところも無く順調に進んでいた、はずだった。


どこの滝だったか、左のもろい凹角から乗越そうとトライするも、落ち口に今にも落ちそうに岩が引っかかっている。

これに触らずに登るにはリーチが足りず、USANに代わってもらった。

USANがさて登ろうとしたその時、「ラ~ク!」の声。

一抱えほどの硬い岩を落とすまいと受け止めようとしてUSANが手を出し、右手の人差し指と中指の先に裂傷を負ってしまった。

うど子の左の脛にもあたってしまった。

側壁にUSANの血が飛び散っている。

脛に当たった石は割れた(^^;)その石が落ちたところの石も割れてた(^^;)

うど子は骨密度(だけが)自慢だ。


一端降りて処置の後、もう下りようかとの考えも一瞬頭をよぎったが、お互いどうやら続行可能な程度で済んだので決行。

気を取りなおして再度トライ。


最後の滝は頑張れば直登も出来そうだが、左から簡単に巻いた。

何の苦も無くスイスイ巻ける。

そしてこの滝を登ると自動的にスラブに導かれ、始まっちゃう(^^;)いや、始まっちゃった(^^;)

このあたりから天候回復、前方にはド迫力の奥壁がジャジャ~ンとお出ましになった。
V字広場の一つ手前。写真より実際の傾斜は4割増しといったところ。


これを見上げたUSANの一言「帰ろ!」(笑)
私もアブナく「うん!」と頷くところでした(^^;)

「たいがいスラブってさぁ、遠目で見たり下から見上げるとド迫力でこんなん登れるワケ無いじゃん!って思うんだけどさぁ、近づくとそうでもないしさぁ、実際に登ってみると大したことないってのが多いよねぇ」

「だと良いねぃ」

などと会話しながら知らぬ間にもう引き返せない壁の中に突入してしまったようだ(^^;)

ルートは行けばはっきりと分かる。
見事な奥壁スラブ、これが見たかった。
V字広場に向かってます。
広場に到着!広いけどナナメってます!


遠目にはこんなとこワシらに登れるワケないわという大迫力なんだけど、近づけばホールド/スタンスは豊富。
登ってみると岩はガッチリと固くフリクションも良い。
所々ノーザイルではやや傾斜がきつく感じ思い切りが必要なところもある。
写真の右が第1スラブ、左が第2スラブ。キレイなV字!


グレード的にはせいぜい3プラ程度止まりだけど、なにせ高度感がありすぎ。
ガンガラシバナよりロープを出してない分緊張感がある。
易しいがアブナイ。
絶対にミスは許されない。
弱気を出さず強気で前向きに、集中して慎重にも慎重を期して一歩一手確かめながら確実に登る。
「落ち着け!」です。
落石の音が大伽藍に響きゾッとする。
出合いまで止まらない。


ミスれば人間も同じ。
我々はノーザイルだったので所々トラバースを掛けながら各々登りやすいところを選んで登った。
所々に細いブッシュはあるのだが、そうそう都合よくあるわけでもなくピンが取り難いのでロープを出すのは大変だと思う。
ロープを出せばかなり時間がかかるし落石のリスクも増え、ルートに制約も出ると思う。
慣れない新人など居ればフリーというわけにはいくまい。
相当に時間もかかるし神経をすり減らすことだろう。
上に先行パーティーでも居れば、撤退も考慮に入れたいほどの落石のリスクはある。


稜線に出る直前で念の為にフラットソールに履き替えた。
最後までラバーソールの沢靴でも行けると思うが、フラットソールの方がラク。

岩瘤の左を登ったが、ここらへんは全般に脆く傾斜も強い。

確認しながら非常に緊張感を持って登った。
中央の岩瘤の左側を登ったが脆い。瘤の先は傾斜がきつくなるがすぐに稜線。
稜線直下。驚いたことにスラブのかなり上部までほんのりと水流がある。


12時ちょうどくらいに登攀終了。
藪の稜線から登ってきたスラブを見下ろし満足の握手で大休止。
ウヒヒ。


ほっとしてザックを降ろしバカ話などするこの時間が好きだ。
満足だ~!

ここから小屋まで約一時間のヤブコギ。

尾根は細いが何となく踏み跡があり藪は煩いものの薄い。
裏側は室谷のムサ沢だよ~!

後は山の恵みに目を皿にしながら冷えたビールを目指して下るのみ。

登山道から眺める南壁スラブはやはり大迫力で、登攀を反芻して自己満足のひととき。
あそこだよ~!


ベースに帰着し久々の旨いビールと大焚火にありついた。
ヒロPゴメンよ!


ここは車止めから30分でテン場、下部はブナの森をゆったり流れる癒しのグリーンタフ、上部はイカツい大スラブの奥壁と一粒で二度美味しい遡行が出来る素晴らしいところだ。
下山も登山道を使ってあっという間。
山の恵みにも事欠かないし、静かなとても良いところ。

今回は一度も水を踏むことの無い沢登り。

秋には時にこんな沢も良いんじゃない?

私の体内の会越血液濃度がやっと正常値に戻った気がした。


(以下休憩を含めたまったりの行動時間。)

登山口からモウガケ沢出合約30分
出合から登山道経由霧来沢本流まで約1時間
沢遡行1時間強
登攀2時間半
ヤブコギ1時間      

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沢登り山岳会 遡行同人 梁山泊 - 山をまるごと楽しむ!

遡行同人 梁山泊は「沢登り」を中心に、山スキー・岩登り・アイスクライミング・雪稜登山など、四季を通じて山をまるごと楽しむ山岳会です。拠点は東京で、安全登山を心がけており焚き火、山菜&きのこに興味がある方、未経験者・初心者も大歓迎です。