白神 暗門~赤石川~大川

~大人の夏休み 奇跡の邂逅編~


2019/8/11-13

メンツ:USAN、うど子


現役会員では当会で一番大人(年上)のUSANが計画してくれた大人(シニア向け)の夏の沢旅。

往時はマタギが闊歩した、ロマン溢れる白神。


メインの計画は暗門から入ってフガケ沢~ヤナダキ沢~赤石川二又~滝川~泊り沢~赤石本流下降~暗門だ。

だけどせっかく白神に入るのならば、ガチガチの計画や時間に縛られるのはヤボというもの。

深い白神の懐に抱かれ、気の向くまま思いのままにゆったりどっしりその場その場で気の向くままに、畏れを以て山の声を聞きながら、山に呼ばれるままに彷徨いたい。

動物や虫達とおんなじに。…そんなことが出来ると素敵だな。

そんな気持ちではるばる出かけて来ましたよ。


遠いなぁ。半端なく遠いよ。

USANありがとう。ほんとうに。


前回白神を訪れたのは2011年の夏。

2011年と言えば地震やらなんやら大変な年だったけど、USANはケガからの再出発リハビリ山行だった。

赤石堰堤から本流を分け滝川に入り、ヤナギツクリノ沢から五郎三郎の沢を経てウズライシを詰め白神に抜けた。

丸々と太った大きな岩魚が群れ、親子岩魚が水辺でまぁるくなって呑気に昼寝をしてたっけ。

USANは3回目の白神。

青い森の白き神。

さて、今回はどんな沢旅になるのだろうか。


8/11 7時過ぎにグリーンヴィレッジ暗門出発。

ここいらは観光客を誘致する基地になっているようで立派な施設が色々あるが、人はあまり居ない。

「世界遺産」とは、常に金儲けの手段ということか。

世界遺産のラインの外側では林道が延び、ブナが伐採されて人寄せの観光基地が作られている矛盾。

入山許可申請を事前に提出してワッペンを携行して入山。ボランティアだってよ、エヘ~、笑っちゃうね。


観光ルートになっている第三、第二の滝を過ぎ第一の滝を大汗をかいて巻いて降り立つと、そこから先は観光客はほとんど来ない山の世界だ。

静かな静かな西俣沢(フガケ沢)を味わいながら、キノコを愛でながら歩く。

危惧していたアブチンは拍子抜けするほど少なくて助かった。

3mほどの滝(綱滝)は巻かずに右端から登った。一、二歩がちょっと悪くお助けをもらう。

巻き道(マタギ道)が左岸に見えている。この巻き道にはかつて綱が張られていたそうで綱滝。


沢通しが早いようだが、知らずにモックリノアゲの明瞭な踏み跡からクマゲラの森を目指した。

途中から踏み跡を失い藪をこぐ。早めに沢に降り、もうちょい上だったか?

ヤナダキ沢を下降。

ヤナダキ沢は踏み跡もあり歩きやすい沢だが、途中には私の人生では一番すべりやすかったヌメッたナメナメヌメヌメズルズル地帯があった。


赤石本流には立派な滝で出合っている。

踏み跡を使って右岸から大巻きしたが、巻き終えてみればここは明らかに懸垂が大正解だったようだ。


この赤石出合い上の大滝を見上げて思わずハッと息をのんだ。


えっ?この滝、生きてる!滝の息遣いや声が聞こえてくるようだ。


今まで多くの滝を目にしてきて美しいとか、優美とか、豪快とか感動する滝はあっても、こんな感覚に見舞われた滝はなかったように思う。敬虔な気持ちになり思わず頭が下がる。

滝そのものが一つの生命体のようだ。魂や意志をもっているようにすら感じられる。

というか、渓や森、山全体が無数の生命体の集合体で、一体となって更に、一つの大きな生命体としてうごめき生きているのがひしひしと感じられる。

沢はまさに山の血管、水は血だ!

いつまでもここから離れ難かった。


ここからここまでが世界遺産です、核心地域です?

ばがごぐでねぇど、ごのぉ。…人間の勝手でズルい?線引きがなんと無意味でバカげたものかが実感できる。

自分の手足、体を使ってここに来てみればハッキリこの矛盾と詭弁がわかる!

便利な生活をしながら都会の机の前でひ弱なアダマで考えだっでわがんねぇんだど、ごのぉ!


秋田側からの二ツ森への青秋林道は舗装され、林道終点には立派な避難小屋とトイレが建っている。

(下山後にわざわざ悪名高き青秋林道を辿り、建設が中止されたドン詰まりを見に行った!その時の気分の悪い写真がコレ↓)


本当に白神を大事にしたいなら、愛しているのなら、入山規制だの指定ルートだの核心地域だのどうのと言う前に、今すぐ林道を閉鎖しこの立派な施設と共にぶっ壊すのが良い。


ここからいくらでも赤石の最源流に安易に降りることが出来るし(実際、釣り人がここから結構入っている模様)、エコツアーだかなんだか知らないが、商業ガイド?が金を貰って付近の山を案内している。

人間が勝手に引いた線の内側は貴重だから触るな、外側は痛めつけても構わないという理屈は通らない。

山には線などありゃせん。どこまでも繋がってるんだ!同じだ!

登山道も無いこの山域を、何日も掛けて好き勝手に歩ける人はそんなに多くはないはず。

林道も登山道も無ければオーバーユースなど無縁だろう。


話が長くなってしまった。


さて、14時過ぎに赤石本流。

滝川との二又界隈は数パーティーが入っているようだ。

フガケ沢で前後した若者バーティーが幕営しており挨拶を交わすが、「どこの会」と問われ「宴会の会」と答えると梁山泊ですか?と言われ笑ってしまう。

去年万太郎でも「宴会の会」と答える当会のメンツに出会ったそうな(^^;)


広い広い赤石川、どこでも泊まれる。

特級の素敵なテン場で体の芯まで白神に浸り、贅沢にブナに抱かれて下界の垢を落とす。


明日は滝川?


快晴の朝を迎える。

今日は予定を変えて、赤石本流を行きイシノコヤバ沢をベースに、泊り沢界隈を往年のマタギ気分でたっぷりと味わうことにする。(後から思えばこれが…!)

同じとこ戻るのももったいないし。

帰りはイシノコヤバ沢を詰めて大川に下りよう!

サブ計画として地形図には予めルートを記入してある。

のんびりと8時出発。

足跡がある。どうやらこちらにも先行者が居るようだ。

先行者の姿が見え、挨拶を交わそうと…アッレレェェェエ~~えええぇぇええ~!!!(@ @)


昭ちゃん!!


うっそ~!(@ @) 

昨年の朝日、角楢下ノ沢で偶然バッタリ会った昭ちゃんが、なんとまたまた目の前に居る!!

奇跡だ!

サプライズ!


世の中狭い!狭すぎる!一体ここはどこだよぉ、白神だぜぃ?大海の一滴!

予定を変更しなければ、時間がぴったりでなければ、ニアミスしたことすら気づかなかったはず。

山の神様の粋なお計らいかお導きか?ピンポイントでの偶然の出会いと縁に驚き感謝して、ここからは遡行を共にさせていただくことになった。

昭ちゃんは所属会Fのお仲間と、地元青森の「山岳同人Tじょ」の方々とご一緒でした。

白神を心から愛し精通する地元山岳会の方々のサポートを頂き心強い限りだ!


広い広い赤石本流を思い思いに歩く。水が少ない。

途中、のんびりと素麺大会で大休止!

ノロの沢、石滝、タケガクラ沢、ヨネジャの沢、シモヤシノキ沢、カミヤシノキ沢、ヨドメワキノ沢などを見送るとすぐにヨドメの滝。

ヨドメの滝は左壁から越える。

Tじょの方々のサポートのお陰で快適に登る。がっちりしたガバが連続している。


ヨドメの滝を超えるとまもなくでテン場予定のイシノコヤバ沢出合いとなる。

出合いやや上流の本流左岸に広いテン場をしつらえる。

今日の行程は普通に歩けば半日かからないだろう。


今宵は白神のド真ん中でブナに抱かれ「奇跡の邂逅の夜」を過ごしたはず…だが…実は飲み過ぎてほとんど覚えてないのだ(^^:)


翌朝起きてみるとズボンも靴下もはかず、防虫ネットも被らずに寝ていた。

アラびしょ濡れで干してある?…さては、酔っぱらってすっころんで水没したか…(^^;)

マッタク我ながら良いトシして毎度毎度情けなし。。ごめんなさい。


7時出発。

酒の抜けない重い体を引きずり、酒臭い息を吐きながらヨロヨロとイシノコヤバ沢を詰める。

かつてランドマークとしてここにあったというケヤキの大木も、マタギ小屋跡も気を付けていても分からずに通過。

滝も特段の悪いところも無く、予定通りすんなりと目的のC775コルに詰め上げた。

そのままコルの向こう側のオリノ沢右俣?を下降。

この沢、地形図で見ると最短で大川支流に下りられるようだが、実際にはC470二又までの短い区間は連続した滝で構成され、ザイルを巻く暇もないほどの懸垂の連続(正確には数えてないけど5回くらい?)で思ったよりも時間がかかった。

8人の大所帯で、ロープ2本、お助けを駆使しながら下降する。

ロープは一本ならば40mあった方が心強い。

狭い沢筋には河原といったものは無く、狭いうねったトイ状の滝、もろいハング滝…が連続し、登りには全く適してないのでオリノ沢?

いや、降りるにも適してねぇべ~とはT会のA坂さんの言葉。全くだぁ~!

お隣りの沢がお買い得?


C470で右側から左又を合わせると沢筋が開け、やっと穏やかになり大休止。

ここから先は林道終点まで平和な沢歩きとなった。

タカヘグリは私は胸、男性陣は腰程度であっけなく通過。

岩魚の走る広く美しい沢。のびやかなブナと沢胡桃の森が素晴らしい。

我々は当初、大川の様相が不明なため、オリノ沢下降後はオリサキ沢から炎天下水を担いで延々と昔のマタギ道を探して尾根に登り上げ、尾根通しで藪を漕いで常徳沢出合い付近の大川に降り、本流を下降しもう一泊してから林道を何時間も歩いて暗門に戻る予定だったが、この辺りに精通したTじょの方々に先導を頂いたおかげで滝も何も無い平和な大川をトコトコと歩いてラクに下降することが出来た。

我々の地形図だけの情報ではゴルジュマークと水線の太い大川本流に降りるという選択は出来なかった。

大川の河原から林道終点への踏み跡は明瞭だが、河原からの踏み跡の入口は予め知ってないとまず分からない。

林道終点にデポしてあったTじょの方々の車に便乗させていただき暗門の車を回収する。


おかげ様でず~っとラクに一日早くルートを回ることが出来ました!

山岳同人Tじょの皆様、F会の皆様、昭ちゃん、本当にお世話になりました!

楽しい沢旅をありがとうございました!

写真も送っていただき本報告に使わせていただいております。ありがとうございます!

この場を借りてお礼申し上げます!


一日余裕が出来た我々は、日本海に足を延ばしここ数年すっかり遠出の定番となった海鮮を楽しむことにする。山&海鮮ね!


これはエガ。イカではない!

翌日は白神での常宿、ワイルドさが数年前よりも更にパワーアップした静観荘にお世話になり、喰いきれないほどの海鮮をたらふく頂き、ふたたび遠い遠い帰路についた。


USANには感謝の言葉もありません。


…トシを考えればもう白神には来られないかもしれない…。

振り返れば、沢を愛し、梁山泊を愛し、仲間を愛して来ました。

生活の中心に梁山泊があり、日々の苦悩や下界の憂さを山に晴らし、沢と梁山泊が、生きて行く糧であったと言っても過言ではありません。

仲間とのたわいない馬鹿話がどれだけ私を力付けてくれたかしれません。

感謝しかありません。

ありがとうございました。





3コメント

  • 1000 / 1000

  • うど子

    2019.09.26 08:45

    @のら・しっぽのら・しっぽ様 初めまして。 当会のHPにお越しいただきありがとうございます!また、私の拙い駄文にお付き合いいただきましてありがたいやら恥ずかしいやら…奇特な方もいらっしゃるものだとビックリしました!(^^;) 白神が世界遺産に登録されるまでのいきさつは自然保護運動?の一つの象徴として有名ですが、悲しいことに日本中(世界中?)に同じような胡散臭いことはどっさりあるように思います。 残念なことですね。 奥深い山中を泥まみれで這いずり回ってみれば、自分のちっこさが笑っちゃうほど分かります。 (そもそも私は人一倍?ちっこいババアですが(笑)) 母なる自然の懐中で、その一部としてかろうじて生かせていただいているのが実感できます。 少なくとも私は例えば草や木や動物や虫や魚たちと比べてハッキリと思いっきり負けてる!(^^;) 人間が自然を保護しようなんて勘違いと思い上がりとしか思えません。 まして、天に唾すれば必ず自分にかえってくる。 謙虚さを忘れたらお終いですね。 なお、HPをリニューアルしたばかりで私も仕組みが分かっておりません(^^;) 何かございましたらrzpktakibi@live.jpにご連絡頂ければ幸いです. ありがとうございました!
  • のら・しっぽ

    2019.09.25 06:46

    あ、やっぱり公開なんですね(笑)
  • のら・しっぽ

    2019.09.25 06:44

    うど子さま 初めまして。いつも「活動報告」を読ませていただいております。 うど子さんの文章が面白く、読み逃げながら楽しんでいます。 白神問題は1985年くらいから取材していました。伐採・林道建設反対運動が起きてから、そして、その反対運動をしていた自然保護団体が世界遺産の登録とともに分裂。林野庁が入山禁止にしてから分裂した人たちが当局に取り入ろうとしたこと……。いろいろ見てきました。 今回の白神報告は、私が白神山地に対して感じていることをうど子さんも感じられたんだなぁと思うとうれしくなってコメントしました。 初めての投稿のため、この文章が一般にも公開させるのかわからないため、申し訳ございません匿名にします。 今後のご活躍を祈念いたします。 まとり ps 以下の文章、特に感動しました。 ********* えっ?この滝、生きてる!滝の息遣いや声が聞こえてくるようだ。 今まで多くの滝を目にしてきて美しいとか、優美とか、豪快とか感動する滝はあっても、こんな感覚に見舞われた滝はなかったように思う。敬虔な気持ちになり思わず頭が下がる。 滝そのものが一つの生命体のようだ。魂や意志をもっているようにすら感じられる。 というか、渓や森、山全体が無数の生命体の集合体で、一体となって更に、一つの大きな生命体としてうごめき生きているのがひしひしと感じられる。 沢はまさに山の血管、水は血だ! いつまでもここから離れ難かった。 ここからここまでが世界遺産です、核心地域です? ばがごぐでねぇど、ごのぉ。…人間の勝手でズルい?線引きがなんと無意味でバカげたものかが実感できる。 自分の手足、体を使ってここに来てみればハッキリこの矛盾と詭弁がわかる! 便利な生活をしながら都会の机の前でひ弱なアダマで考えだっでわがんねぇんだど、ごのぉ! 秋田側からの二ツ森への青秋林道は舗装され、林道終点には立派な避難小屋とトイレが建っている。 (下山後にわざわざ悪名高き青秋林道を辿り、建設が中止されたドン詰まりを見に行った!その時の気分の悪い写真がコレ↓) *******

沢登り山岳会 遡行同人 梁山泊 - 山をまるごと楽しむ!

遡行同人 梁山泊は「沢登り」を中心に、山スキー・岩登り・アイスクライミング・雪稜登山など、四季を通じて山をまるごと楽しむ山岳会です。拠点は東京で、安全登山を心がけており焚き火、山菜&きのこに興味がある方、未経験者・初心者も大歓迎です。