飯豊 玉川 桧山沢(その3)

3日目 (8/15)

4時起床

早朝の沢を渡る風が時折強く吹き、タープが波打つ。

朝のそらには、早雲が流れ込み、密度を増してゆく。

間近に見えてきた稜線から伸びる数本の支尾根には、ガスがかかり 暗雲を漂わせている。

焚火の炎も風にゆれる。

朝食の熱いラーメンを 食べ終えて、今朝も会長が特製オニギリを握ってくれた。

「ポツリ。」灰色の空から水滴が顔を打ち始めた。さあ、急いで片付けるべェ!


小雨の中、6時半テン場を後にする。

天気は曇り、後時々小雨、時々本降り。

今日はここから高度を500Mかせぎ、 下山で1,500Mの高度差を下る、ハードなスケジュール。

グングンと急激に高度を上げる滝群を、ワシワシ登ると、頂上がガスに霞む 高く屹立した岸峰が視界にはいる。 

雨に煙る巨大な岸峰には、不思議な 神の存在感が感じられた。

荘厳な景観に思わず見とれる。

会津の人々は古くから、飯豊山を神の住む山として信仰している。

生命を燃やした 人の魂は天に昇り、やがて空に近い高山に降りた後、里に降臨すると考えられた。

そんな原始山岳信仰の祖とされる修験者役小角(えんのおづぬ)も652年飯豊山に 神を祭ったと伝えられている。


辺りは低木、草原が広がり源頭の雰囲気になってきている。

流れをまっすぐに進むと 御西小屋につながる。

時間は10時少し前、高度計は1650mを指している。 行動食を少しかじる。

時間短縮を図り、左から出合う3Mのスラブ滝を登り、稜線上 1988Mの小ピークを目指す。

細くなった流れを会長トップでヒタヒタと登る。

「ほーッ、サンショウウオがいるよー!」の会長の声。

モウセンゴケが密生する沢スジの透明な流れの中、つぶらな瞳をくりくりさせて サンショウウオが隠れていた。

水滴にしっとり濡れた小さな花々が可憐に咲いて、 我々の眼を楽しませてくれる。

しばらく進むと伏流になった流れが花に紛れて消えていた。

トップを交代しつつチシマザサをかき分ける。

ナナカマド混じるハイマツ帯を越えて ガランとした小ピークに立ったのは、お昼12時ちょうどだった。 


ガスの登山道を歩き、 飯豊山頂上に立つ。

ここまでの無事を山の神に感謝。小休止の後、はるか遠く えんえんと続くダイグラ尾根の下山道を溜息まじりに見て、重い腰を上げる。

細く足場の悪いアップダウンの激しい道の急斜面の岩場には、半分枯れかかった コメツガの樹が張り付いている。 

宝珠山、千本峰、休場ノ峰と疲れた身体に喝を入れ て通り過ぎる。

闇につかまり、ヘッドランプの弱い光芒をたよりに、汗まみれ埃まみれの 疲労困ぱいの態で2日前に入った入渓地の吊橋に、やっとの思いで辿り着いた。 


目の前では、悠久の時を変わらず流れる桧山沢の水の音だけが、暗いブナの森に共鳴していた。


 タイム:

(1日目)飯豊山荘車止7:30~大又沢出合8:15~入渓8:40~十文字滝10:30~ マミ沢13:30

     ~テン場16:30       

(2日目)テン場7:40~広河原9:15~高巻10:00~カゴノ沢11:50~本カゴ沢14:50

     ~テン場16:50       

(3日目)テン場6:30~岸峰7:30~2又9:40~稜線12:00~大又沢出合20:00

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沢登り山岳会 遡行同人 梁山泊 - 山をまるごと楽しむ!

遡行同人 梁山泊は「沢登り」を中心に、山スキー・岩登り・アイスクライミング・雪稜登山など、四季を通じて山をまるごと楽しむ山岳会です。拠点は東京で、安全登山を心がけており焚き火、山菜&きのこに興味がある方、未経験者・初心者も大歓迎です。