飯豊 玉川 桧山沢(その2)
2日目 (8/14)
5時起床。
燃え尽きた流木の灰がホンワカ暖かい。焚火の跡に細木を乗せ ガムテープを火種に着火。
沸かしたお湯でモーニングcoffee、やさしく甘い ホットココアでほっとする。
「ふーふー。うまいなあ。」 朝食はウドン。乾麺を熱湯7分で茹で上げ、冷たい沢水で洗ったら大皿にあけ る。特製スープでいただきます。「ずるずるズルーッ。うまいなあ。」
昨夜の残りのご飯を会長特製の大玉おにぎりにしてもらう。おかずはUSANの 牛肉みそ焼きと昔なつかしノリ玉フリカケ。ビニール袋にギュッと詰めザック天蓋 に仕舞い込む。
7時半テン場出発。
左へ曲がって伸びる本流には5MCS滝が 上部にもう1段の滝をかけて落下している。
烏帽子沢につながる右岸壁をT岡8段 が登る。
若干右寄りを途中空身になり、中間ビレイを細木に取りザイルを伸ばす。 けっこうなザイルを伸ばして奥の潅木にビレイ点をとる。
後はプルージック登攀で ラクチンである。下から見るよりなかなかショッパイ壁であった。
滝の上流はそれはそれは圧倒的な存在感で立ち塞がる大石巨岩帯であった。
これはへたな高巻より疲れる。登って降りて行きつ戻りつと、まるで大岩のジグソー パズルのよう。
約1時間のジグザグ遡行の末、茶屋穴沢を右に迎えると渓相は一変、 突然、広大な広河原が目の前に開けた。
左右に開けた開放的な渓を、ルンルンと沢水を 蹴散らしながら歩く。
今日も空は雲ひとつ無く、吸い込まれるほど高く青い。
山々の 木々は緑に光っている。絶景である。真夏の沢である。
広河原のどんづまりで沢は大きく左に湾曲し、両岸絶壁の中、入り口から一気に青黒く 深い色で奥へ奥へ続いている。
桧山沢の核心部不動滝を含有する大ゴルジュ帯である。
泳いで行けそうだが奥は右に曲がり、先は見えない。
きっぱりあきらめ高巻を決行する。 少し戻り右岸から高く伸びる緑の急斜面の潅木帯を登りはじめた。点在するブナの大木を 目標にしながら進む。
何本目かのブナの下で一休み。ふーっ、汗びっしょりだ。
「おんや!こんな所に。」ゆるくなったブナ根元斜面にトンネルが掘ってある。
会長が「クンクン。熊のにおいだ!」枯れ木でつついてみるが気配は無い。留守のようだ。
ブナの大木の下だし、秋には実がたわわになって、いい住処なんだろうなあ。
再び高巻を続ける。2時間ほどで一旦左から下るカゴノ沢に降りる。ふーっ、バテバテ!
眼下にはまだゴルジュが続いている。一息入れて再び小尾根を登り始める。
午後2時に 高巻終了。滝の落ち口上のピンポイントに下降。ナイスるーとファインディング!さすがの 先読みのプロT岡8段。
高巻中に遠くに望めた雪渓で埋まる赤岳沢を右に見ながら、 核心部を越えた気楽さで、心も軽く、足取り軽く遡行を開始。
巨岩転がるゴーロ帯と数基の 滝群を登りに登って1時間。
駒形沢と本カゴ沢の2又に足がとどいた。午後の4時になって いたが、まだまだ先へと進む。
右の駒形沢に進路をとる。
大岩を越える一歩一歩で、高度は 一気に上昇してゆく。
はるかに薄緑で空にラインをひく稜線が見える。
正面にガレたスラブが 広がり、沢は左から10Mの岩だなになって白いスジで落水していた。
勝手気ままにルートを とって全身で風を感じながら攀じる。
渓はグングンと高度を上げ無数の滝群がまるで天空から 流れてくる流しソーメンみたいに落ちている。
ハラがへったなぁ。 テン場を探しながら岩を乗っ越すがなかなか5人分のスペースがない。
3番目の遷都でなんとか
横になれる土地を確保。ゴロ石をどかし草を敷きつめ快適なテン場造成ができた。
2日目の沢の夜も静かに更けてゆく。
今夜も岩魚はいないが、美味しい料理に舌鼓を打つ。
マヨたっぷり野菜サラダ、ココナッツみるく入り超辛タイカレー、高野豆腐のお煮しめ等々。
足元の沢水で冷やしたビールが喉を潤す。乾きものをツマミに焼酎に移る。
ビリー缶が乗る小さな焚火の灯に映る5人のオジ達の顔は、ここまでの充実した遡行への満足感 と達成感とでいい顔になっている。
「オーッ、北斗七星が目の前にあるぞ!」会長の声で皆夜空 を見上げる。
明滅する星々に囲まれて一際輝いているヒシャクのシルエットが目に映った。 心は宇宙の彼方へとワープ。
皆、静かに酒をかたむけていた。
谷を渡る夜風はもう、ここでは 秋の気配を運んでいた。
タープをたたく強い風に意識がもどり腕時計を見ると2時を回っている。
もそもそ起き出てゆるんだ紐を張り直し、空を見上げると、あんなにたくさんあった星達が消え 僅かの光りを残すだけになっていた。
今日は天気が崩れるかもしれない。
つづく。
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