奥利根本谷
沢を志してから個人的にはずっと念願だった奥利根本谷、周囲では「もう3回も行ったし行かねぇ」とか、あまり見向きもされず最近はすっかり諦めていましたが、ひょんなことから7月末あたりに「お盆は休みの合うメンツで奥利根本谷でも行くか」という話が持ち上がり、おかげさまでメンバーの強力なサポートを得て、夢にまで見た三角雪田を踏み大水上山の水源の碑に立つことが叶いました。
奥利根本谷、ずっしりと重厚で風格のある、沢登りの要素が全て詰まった美しく素晴らしい谷でした。
(13日)十字峡-(車)-水上道の駅7:00待ち合わせ-(車)-矢木沢ダム(渡船)-バックウォーター9:00-
お盆の時期はたいていは雪渓がまだまだ多く、苦労させられることも多々という本谷ですが、今年は例年よりも残雪量が多かったようです。
他パーティーの方は賢くもキャンセルされたと伺いました。
また、出発直前に急に天気予報が悪化したことも重なり、シビレる情報ばかりでココロはどんより、意を決しての入渓でした。
最近の日本の天気はホントに激しくて、山行のたびに一番悩むのは「雨」です。
GWにネコブ~巻機縦走した感じではヤブヤブで雪が少なかったのですが、今年は積雪量そのものは少なかったものの、春先の低温と梅雨時にあまり降雨がなかったそうなので雪渓が多く残ったものかと想像します。
雪渓の悪条件と悪天候予報のせいか、このお盆は他に遡行パーティーは無く今シーズンは今のところ本谷を詰めるのは一番乗りのようでした。
我々も終始雪渓や天候に不安を抱きながら、判断に悩みながらの遡行でした。前夜十字峡の小屋に集合。
13日(晴れ)
ありがたいことに高柳氏から撤退する場合の連絡の手筈を教えて頂きました。とても心強かったです。
越後沢出合いまで(シッケイガマワシ?)ですでにいくつもの雪渓をくぐることになり、どうやら水と雪渓との戦いが始まったようです。
時間もあるので目の前の淵で釣りに興じますが、40数センチと40センチ弱の遡上岩魚が釣れました。
14日(曇り時々雨)
後から思えば、結果論ではあるがこの決断が成否を分けた!
ここからはエスケープもままならず何かあれば下山遅延でヘリが来てしまう。仕事や家庭に縛られる一般社会人にとっては判断が難しいものだ。
お~し突っ込むぞ!
朝から冷水との戦い。
剣ヶ倉土合と呼ばれるゴルジュ帯も基本的にずっと水線通しでいきましたが、相変わらず水との格闘が続き、ペラペラの雪渓をくぐりまくり、へつり、巻きと滝ヶ倉沢出合いまでなんと約5時間!
条件が良ければ滝ヶ倉まで小一時間で抜けられる場合もあるらしいのですがとても信じられません。
ガタガタ震えっぱなしです。直登出来ない滝の巻きもあまり良くありません。
いよいよオイックイですが、オイックイだけで雪渓は10個までは数えましたがもうめんどくさくて数えていられません。15個くらいかな?
全てペラペラのスッカスカ雪渓で庇部分には穴が空いてるものばかりだし脚なんかもか細くて今にもカクっといきそう(^^;)
ヘッデンを付けて真っ暗なペラペラ雪渓の下でロープ出して背の立たない泳ぎを強いられたり、もうキモ据えて運を天に任せるしかありません。
昼間にヘッデンつけっぱなしの遡行なんて笑えるというか泣けるというか。
足つかない。こんなとこでロープ出しての泳ぎなんて😵
小雨が時折落ちてきてとうとう来たか!こんなところで~😵と思ったが、まだまだ嫌がらせ程度で大丈夫。
でもやっぱりため息だ~😖
裏越後沢手前の雪渓は長大で先が見えません。ペラペラの入り口をちょっと入ったところの右岸から外に出てジャリジャリの悪いスラブから巻こうと空身で交代で挑戦しますが、悪すぎ。ボロボロの砂利壁からは落石の嵐
ここで真打登場。泥親父の異名を持つNASさん(御年ン歳、こちらも首にボルト入り💦) が見事ジョリスラを突破!泥親父ここにあり!✊
ですが雪渓まで降りる手段に悩みました。
懸垂するか…といっても何しろ支点が無い。
しかも乗り口となる雪渓の末端は接地してなく、薄く先細りで垂れ下がっている。
ジョリスラトラバースは支点も取り難く非常に危険。
スラブを巻いて懸垂となればどんだけ時間かかるんだか…ブッシュまでかなり追い上げられ時間切れお座りになるかも…
戻って別ルートから巻きなおそうか…?いやぁ、ちょっと…戻るといっても懸垂💦
「もう(ハーケン)一本でやっちまおぅ!(懸垂を)」「(縦リスでしかもあんまり効いてない一本なんて)絶対ヤダ!」とのやり取りあり💦
みんなでリスを探しまくりやっとの思いでハーケンを2本かろうじてそれなりに💦効かせることができ(ほとんど縦リス💦泣きたい。)、何とか雪渓上に斜め懸垂で乗ることが出来ました。
一つの大きな核心でした。
ここの雪渓は全雪渓中で一番長大で安定していた。(ような気がする。)降り口はなんとか対岸に乗り移りフリーで降りられた。(一部バイル使用)
さすが噂に聞くオイックイ、巻くとなればたいそうなことで更に1日2日はざらにかかりそうなので、運が良かったとも言えます。
今山行中、雪渓上を歩けたのはここともう一つくらいあっただろうか?
裏越後沢出合い手前まで雪渓は続いており、途中の中越後沢はびっしりと雪で埋まっていました。
この雪渓は年を越すかもしれません。
雨混じりの天候で体もココロも冷えましたが、ほとんどの雪渓の下を運よく突破できたのは大きかったと思います。
悪いところも率先してスタスタとトップを行ってくれるトシ、水線突破得意の伸と良い凸凹コンビ。うど子はどっちもアキマヘン💦
極悪部分はNASさんの真打登場と頼もしい限りで、ワシはただの味噌っかす。
手取り足取り引っ張り上げたり押し上げてくれたりとお姫様遡行本当にありがたいことです!
男衆3人ならもっとずっと早いやねぇ。ごめんなさい💦
無事にオイックイを終え、裏越後沢出合いで幕。
テンバとは名ばかりで水線と同じ高さの河原しか無く、雨が来たら後ろの急な尾根(ブッシュはあるがほぼ岩壁)に逃げてセルフをとって時が過ぎるのを待つしかありません。ここはエスケープも無い奥利根本谷ど真ん中!
なのに雨予報😖ため息ばっかりだわよ。その割に宴会は楽しい!😃
運よく幸いに一晩無事に眠ることが出来ました。
15日(小雨時々本降り不安定)
行程的にも少しはラクができるかと思いましたが、ナカナカ悪いところもありました。
魚留の滝を軽く左から巻くとほどなく立派な大利根滝登場。
ほうほう、ここがかのユウメイな大利根滝なのねぃ😃
NASさんトップで登攀途中から雨が本降りに。
ここは名所だし晴れていればかなり嬉しいはずなのに。
いくつかの悪場をやり過ごして、小雨降る中イタドリぼうぼうのハト平あたりでラーメンシステム大休止。
ハト平から約一時間過ぎたあたりで佐市平のテンバ地帯到着。物色しながら歩く。
これまでテンバ適地はいくつもありましたが、ここが一番安全な良い大幕場地帯でした。
ここら辺りは右岸、左岸ともにテンバ適地が多く草を刈れば合計何十人でも泊まれそうでした。
ここまで来れば雨が降ってもなんとか大丈夫!最悪尾根からエスケープも出来そうでかなり気が楽になりました。
雨がザ~っと降ったり止んだりめんどくさいけど、ウスヒラ、ナラタケの収穫たっぷりの大宴会。
せっかく河原の良い宴会場なのに途中のザァザァ降りでタープに退散!
苦労して切り出したぶっとい薪も、焚き火が消えてしまいもったいないことをしました。
もったいないといえば、NASさんのハーネスの取り外し可能ギアラックがいつの間にか勝手に外れてしまい、高級?ガチャ/スリング類もずいぶんいっぱい泣く泣く残置しています💦
次に来た人はラッキーですよ~!
16日(雨、時々本降り止んだり)
予報は更に悪化。
今日は絶対に詰めあがるぞ!てゆ~か余裕でしょ。夜は風呂入って焼肉ビールだぜ!なんて若干気も緩みがち。
でもますます天気悪くなりそうでウカウカしていられません。朝のうちに距離を稼ぎたい。
名前の付いた大滝だけでも4個超える日です。3日目にしても朝っぱらから雪渓とお水の格闘が延々と続きます。
ホントもうイヤっ!💦水なんか触りたくもないし見るのもヤダ!💦寒すぎ!😖
ミニ人参滝みたいな滝を巻き、雪渓を抜けた本物の人参滝は立派な滝ですが水量も多くとても登れる気がしません。
トシちゃんトップで右のボロいリッジからガレた馬の背を経て急なブッシュ帯に入りトラバース。
悪い雪渓を潜った先の深山滝はNASさんトップで右壁から。
何故か大滝登ろうとする度に雨が本降りになる。どんよりです。。
登攀途中あっという間に増水、茶色い濁流が落ち口から噴き出してくる。
雪渓を潜った直後ですが、もう水は茶色い濁流になってしまい雪渓下の沢床は危険。間一髪で命拾いしました。
ホントなかなか勘弁してくれない沢だここは😖
みんなで登攀中、小石大の落石がうど子の左目に命中。頭はガンガン、首は軽いむち打ち症状でア、失明したな、片目で良かったと即諦めましたが、なんと全くの無傷に等しく遠いものならそれなりに見えるいつもの老眼に戻りホッとしました。
この期に及んでまだまだお水との戦いは続く。
最後の水上滝は岩が赤っぽい。傾斜は緩めでさほどの威圧感はなし。
これまたNASさんトップで右壁のフェースから。またまた定番の雨。いったい何なの?💦
ガタガタ震え止まらずカラダはガチガチに固まってるが、これで最後の滝だと思うとなんか嬉しく、ロープに繋がったフォローの気楽さでルンルンと楽しく、一つ一つのホールドを愛しむように感慨に耽りながら登らせてもらった。
この谷は終盤の大滝でやっと高度を上げてくるようです。他にも割と高い滝やもっと悪い滝があったと思うけどもう何がなにやら💦
各大滝の登攀グレードはそれほど高くなく3プラ程度と思われますが、高度感はあります。
どの滝も贔屓の芸能人か遠距離恋愛のつれない彼に逢うかのように嬉しかったミーハーなワシ(^^;)
悪天で若干濁りはあるが、三角雪田から落ちる水源の水を汲み感激の記念撮影。イェイ!
見た目よりも急な雪田を滑落に注意しながら登ると一息で登山道に出ました!やった~!✊😃
翌週あたりは裏越後沢手前の雪渓以外はほとんど落ちてブロックの上を歩けるかもしれません。
条件が良ければ3級の沢とも言われる奥利根本谷ですが、今回は雪渓はもとより水量も多く、水温も低く、天気も悪く、また増水と難易度的にはそれなりに結構上がっていたと思われます。
沢登りってすごいね。
感謝。
どっしりと重厚で風格のあるさすがの奥利根本谷。
ブルブルガタガタ震えながら水源の碑を撫でさすって記念撮影。
またまた降り出した雨の中、丹後山を越え食べごろのチタケだらけの急な下り3時間で登山口に到着。
越後湯沢の仮眠室付き24時間風呂に浸かり飲み屋で充実満足の乾
(記:うど子)
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