越後 花降沢~裏荒沢(なんちゃって編)

2016/7/16-18

メンバー: CLうど子、NASさん、南郷勇、ガラ中


花降沢、花降岳と聞いてすぐに分かる人は一部の沢屋かヤブ山マニアくらいではないかしら?


花降岳のお隣は名峰荒沢岳でこちらは有名。

銀山平の裏側、中ノ岐林道の灰ノ又沢から途中分かれて花降岳に延びあがる沢です。


この山域を愛する私が夜な夜な地形図を眺め倒し「花の降る沢…」という美しい名前に惹かれたのはずいぶん昔のこと。


中ノ岐川左岸には滝沢や西ノ沢各支流、箱ジョウ沢…といった魅力的な沢が目白押しなのだが、何しろアプローチや下山の不便な山域であるせいか遡行記録がとても少ない。

当時は遡行記録といえば登山大系くらいで、会報やネットなどにも情報がなかった。(というかネットすらまだ世間に浸透していなかった。)


その後ポツポツと記録が発表されているが、まだまだ遡行頻度が高いとは言えない魅力的な沢だと思う。


近年、稜線に縦走路が復活したので今後はこの山域にもっと遡行者が増えるのではなかろうか。

このあたりは十字峡方面や奥利根、尾瀬などをからめたオリジナルなルートを季節を変えて描くのがなかなか楽しいところじゃないかな。


この度、数年前春の裏越後三山縦走、増水で逃げ帰った中ノ岐林道などを楽しく思い出しながら小さな計画を描く機会を得た。


いつものことながら海の日の連休は天候が不安定で悩ましい。

今年は世紀の寡雪なので、例年ならば7月は雪渓に埋まっているであろうこの山域も行けるんじゃ無いか。


平均年齢58.25歳。(誰か一人が上げてるのか平均的に高いのかは秘密。)

完全無欠の中高年パーティーです!

体力はえらく低下してるし腰痛、膝痛、〇〇痛だのその他なんじゃらかんじゃらポンコツの車体ではあるが、我が身をだまし無理矢理いぶし銀のビンテージクラシックカーと思い込むことにして現地に向かった。


元気で達者な少人数パーティーで一泊ギリギリと見たので高齢者の我々は2泊で臨むことにした。


初日はゆっくり起きてウダウダと釣りを楽しみながら昼はそうめん大会でまったり、夜は岩魚尽くしで大宴会という騙し言葉にうまいこと引っかかったオジサン数名(^^;)ヒヒヒ。

前夜は毎度の「道の駅ゆのたに」にお世話になる。


16日(曇ったり晴れたり)


このトシになると金曜深夜着土曜早起きは堪える。

ってことでのんびり起きて車を雨池橋に移動させ中ノ岐林道を歩く。

今日は花降沢出合い手前で泊まる予定なので超まったりの行程、釣りを楽しみながら行くことにする。


数年前の7月に大増水でこの林道を逃げ帰った時は、この林道を横切るいくつかの沢がドウドウに溢れかえり何回かザイル渡渉を強いられたりスクラムで渡ったりしたのがウソのような何事もないただ普通の林道。

大岩が焦げ臭い火花散らしてガツンガツン流れていた濁流も今日は美しいナメの美渓。

あの時は中ノ岐本流にまで雪渓がドド~ンと張り出していたが、今年は雪渓のかけらもなく従って山菜もボウボウでした。

二岐川出合いで竿を出すが坊主、どうやら沢山の釣り師がすでに入った後のようだ。

10時ちょい前に灰の又橋から入渓、すぐに竿を出すがどうもイマイチ。

もう少し先まで足を延ばすことにする。

すぐに釜をもった小滝がいくつか現れる。(花降出合までの写真の順番はアヤシイ💦)

巻いたり登ったりして通過したと思うが、どこをどうやって越えたのかすでに記憶無し(^^;)

まだシーズン初で人が入ってないせいか明瞭な踏み跡も見当たらずルートの検討などに思っていたよりは時間がかかった。


記録やガイドによるとここを1時間から1時間半程度で通過しているパーティーも多いようだが、初見だと一般的にはもう少し時間がかかるんじゃないかなぁ。


どこの滝だか忘れたけれど、2名は左岸に中途半端なトラロープがかかっている箇所を巻いたがここは結構悪く、あとの2名はもっと滝に近いところから上がって落ち口付近にトラバース、こちらの方がラクだった。


途中、そうめん大会に最適な広い一枚岩があったので大休止。


う~ん最高っ!やっぱ夏の沢はこれっす!

のんびり竿を出しながら歩を進め、左岸高くから滝を落とす枝沢を越えるとすぐに花降沢出合い手前に到着。

良いテンバが取れるかわからなかったが、なんと整地不要の絶好のスペースを発見!

タープ2つが余裕で張れるほど広くゴツゴツ無しの快適なテンバが取れた。

タープを張り終わると漁労長は猛反撃に出て、鼻の穴をおっぴろげ意気揚々と獲物袋をぶら下げて宴会場に戻ってきた。

ゲゲゲ。

岩魚をみんなで捌き、毎度の漬け丼を頬張る。

そして出ました!勇ちゃん名物の豚足!歩留まりの悪さは天下一品(^^;)

今宵は贅沢三昧でビールをおかわり、明日の遡行に備えて重い荷物をジャンジャン吐き出す。


17日(曇時々雨)


6時半前に出発。

花降沢出合いはショボイ。

小滝を2つ滝水流中央から快適に越える。

その先には驚いたことに小さな魚影が走った。


すぐに黒くぬめった6m滝。

水流右を探るが非常にヌメっており足場が不安定。

結局ちょい手前の右手のカンテ状から上がりちょうど良いところに良い感じにあるブッシュを引っ張り滝の落ち口までバンドをトラバースした。

このルートは悪くなく慎重に行けば問題無い。


すぐに左壁にスラブを持つ12m滝。

写真で見るよりは立っていてずっと立派。

下から見てスラブ経由になんとかルートは追えるが、途中ピンが取り難そうだし荷揚げや後続の確保にも苦労しそうだ。

迷わず右岸から巻く。

巻きは悪くなくすんなりと滝上の河原に降りることが出来た。


ほどなく沢が左曲する手前で右方から迫力のある大滝がババ~ンと現れる。

これは完全に本格的クライミングの世界、目でルートをアレコレ追うだけでもちろん右岸巻き。

大巻きを覚悟し岩峰を回り込むが、意外に快適であっけなく沢床に降りることが出来た。


沢床が穏やかになるとなんとか幕営出来そうな草の台地が現れるが、タープを張る支柱を得るのは難しそうだ。

このあたりから雨が本格的に落ちてきた。

心なしか水が増えてきたような気がしてカッパを着込み先を急ぐ。

易しい階段状小滝をいくつか越え、晴れていればさぞや美しいに違いない見事なスダレ状大滝を快適に登る。

すぐに二俣がゴーロで出合う。9時半位に到着。

花降岳が雨に霞んで見える。

二俣のすぐ下にはエスケープに考えていた枝沢がショボく右岸から入っている。


ほぼ核心部も越えたし時間的にも技術的にも予定通り詰め上がって裏荒沢に下降することは十分可能と思った。

時間はパツンパツンだろうけども。


ここで、我々の心を見計らっていたかのように雨足が更に強まってきた。

「疲れたなぁ」「腰痛てぇ」「魚が居ない…」「雨が…」とかなんとか言いあってみんなのテンションがどうも上がらぬまま進退の決断が付きかねた(^^;)

私自身「さぁ行くよ!」とみんなを引っ張っていくだけの強い気持ちが今一つわかなくてかなり逡巡する。

そして、「う~、腰が…」と声を揃えたのでした💦

スカッと晴れていれば、或いはもう5歳か10歳若ければなんつうことなく普通に詰め上がっていたに違いないがモチが上がらず、エスケープ沢を目の前にして快適なテンバ生活が脳裏に浮かんでしまった。


我ながら情けないが集中力を欠いた行動は事故の元でもある。という事にでもしておこう。

完全にトシだね。元気とモチが足りないわ。


かなり後ろ髪を引かれたが、ゴクリと唾を飲み込み溜め息を二ツ三ツついて「まいっか」とエスケープ沢に入った。

う~む。この決断は記憶に残りそうだなぁ…こんなんじゃ沢登りなんてもう出来んわ…情けなし…この期に及んで溜め息ついてる始末。


この小さな沢、地形図ではパッと見1400付近の平坦地に端を発するように見えるが、良く見ると1400付近でぐいっと北に曲がり1700を越え1890ピークからの支尾根まで達している。

我々は少し行き過ぎてから気づき、ちょっと戻ってから裏荒沢への枝沢を目指した。

地形図上の台地は当然ブッシュがブシュブシュだがさほどでもなく、広く平坦なので緊急時は水の近くで安全に泊まることが出来ると思う。


細かいスラブ滝なんかあって短いけど結構楽しい。

つまりこの中間尾根や枝沢は、増水等のエスケープとして稜線に上がるにしても林道に下るにしても非常に有効なルートであることがわかった。


下降の枝沢は下りやすい沢で嫌らしさは無く、最後は懸垂で裏荒沢へ降りた。

ここを懸垂して裏荒沢本流に降りた。


はれまぁ、雨も上がってしまったよ(^^;)参ったポン。

ここら辺はまだ魚が走らない。

てことで?更に裏荒沢を下降。

いくつかの滝を「ええい、面倒!」とさっさと懸垂を交えて降りて行く。


登れば楽しそうな大きめの滝もいくつかあった。


途中整地すればなんとか泊まれそうな場所もあったのだが、整地に時間を掛けるくらいなら花降出合いのテンバまで戻っちまおうよということで更に下降。

(どうやら某Uちゃんは、なんとしても灰ノ又沢を釣りたかったらしい💦)


なんだか何しに来たかわからねぇという感アリアリなのだが、前夜のテンバに舞い戻ってしまった(^^;)

ここで16時くらい?

こんだけ行動するんなら、やっぱり普通に詰められたよな~(- -;)

モチベーションの矛先が間違ってんのか?(^^;)

あぁ、でも快適、勝手知ったる高齢者のグループホームは楽チン、ベッド付き(^^;)

動くたびに「イテテテ」「アイタタタ」とか「ハ~、フ~」とか思わず声が出る。


昨日あんなに釣れた岩魚なのに何故だか今日はウンともスンとも言わない。

いつものように宴会を始めると嫌がらせのように雨が落ちてきた。


仕方なく蚊がうじゃうじゃのタープの下に逃げ込んだ。

一晩中防虫ネットをもろともしない蚊の攻撃にまんじりともせず朝を迎えた。


18日(晴れ時々曇り、時々小雨)


雨も上がり今日はゆっくりと下山するのみ。

食べごろプリプリのきくらげやみずみずしいフキに寄り道しながら下降。


最後の滝をボ~っと巻いているとなんと下から作業服の人が上がってきた!?

なんとなくボンヤリ歩いているうちにそのまま林道に着いてしまったようだ。

作業服の方は地元の方で春には熊撃ちもされるそうで、この道(といっても踏み跡はほとんど良くわからないが)はかなり奥まで入っているとのことでした。

春、どんなルートで熊を追うのか聞いときゃ良かったなぁ。

灰の又橋の脇から歩けるので時間のない時や増水の時は使えそうです。


どうにもシャキッとしない記録?ですみません!(^^;)

やっぱり稜線に詰め上がり我が来たりしルートを振り返るってのが醍醐味だと思いました。

消化不良ですが、これからの若手に期待ということで。

ポンコツ車は手入れをしないとただのポンコツ中古車だわねぇ(^^;)


花降沢、登りの労力の割には裏荒沢の下降が結構長いので、人数の多いパーティー等は銀山平に車をデポするか2泊の計画にすると無難かもしれません。

初級の沢とは言えやっぱり越後の沢、今回の我々のルートでも遡下降含めるとまともに3級程度はある感じでした。


----- 話が横道に逸れるけど、「花降」という地名に興味をそそられてちょっと調べてみた。


1600年代中ごろから1800年代にかけて、この地ではシルバーラッシュがあった。

農家の源蔵が銀を発見したのが端緒のようだ。

「銀山平」という地名に代表されるけど、銀にちなんだ地名が未だにいくつも残ってる。

「花降」は花降銀からのものみたい。

花が降る沢じゃあなかったわ。

その他にも、「源蔵山」「灰吹山」「石抱橋」などなどそれぞれに謂れがあって、当時のシルバーラッシュを彷彿とさせる地名が今もなお残ってるみたいだ。


その後にはダムの建設もあるし、人の手の入らない辺境の地かと思っていたらなんだか色んなヒストリーがあるんですね、ここら辺。


ワシも銀でも探してみようかな(^^;)

0コメント

  • 1000 / 1000

沢登り山岳会 遡行同人 梁山泊 - 山をまるごと楽しむ!

遡行同人 梁山泊は「沢登り」を中心に、山スキー・岩登り・アイスクライミング・雪稜登山など、四季を通じて山をまるごと楽しむ山岳会です。拠点は東京で、安全登山を心がけており焚き火、山菜&きのこに興味がある方、未経験者・初心者も大歓迎です。