北アルプス 真川シンノ谷~黒部五郎~五郎沢~黒部奥ノ廊下~薬師沢左俣
~黒部源流部を繋いで周回する雲上の天国~
けれど悲しいかなボロボロのジジババはそうも行かず、メジロの居ない雲上の楽園でまったりと楽しんでくることにしたんです。(あの世への旅立ちの予行演習?)
岩井谷から上がろうかと話していたが、上には小屋があり本流の水を飲みたくない感じなのでやめた。
北アルプスは遠い。
折立までは上信越道経由が定番ですが今回は中央高速にのり飛騨方面からのアプローチとしてみた。
今回、全般になめきった計画でロクに下調べもしなかったのでこの時間もすっかり想定から抜けており、当日朝になって焦ることになった。
お盆の折立、やっぱり混んでて登山口から約1キロ位離れたトンネルの手前になんとか車をとめ、登山口付近の喧騒をよそに歩き出したのは10時20分頃。
真川林道を途中で降り延々と真川本流の河原を行く。
シンノ谷は全体的に非常に荒れている。大きな石も小さな石も浮いていて、一歩ずつ確認しないと足を置けない。
地質のせいだろうか、これからもずっと崩れ続けるに違いない。
歩きずらい不安定なガレの巨岩帯を延々といなすのは体力を搾り取られる。
初日は寝不足で荷も重く入渓が遅かったので、時間は早いがC1720くらいのガレの隙間に無理矢理テンバをとった。
目の前には北ノ俣ピーク下に突き上げる右又が出合っているが、この沢は実際に見ると出合いから一面にビッシリとガレが詰まっており、とてもじゃないが入渓する気は起きない。
さて、ほぼ薬味丼に近い岩魚のヅケ丼で入渓初日の宴。
翌12日はなる早出発。
長い一日になりそうだ。
今日はどうしても黒部五郎の小屋でビールを買わなくてはならない!
出来れば五郎沢を下ってテンバを得たいところだ。
出発するとすぐに滝っぽいのが2,3あるが、多少ヌメってはいるものの特に苦も無くフリーで簡単に越えられた。
短い滝場を越えると伏流帯が断続的に現れ、C2100位からは良いテンバもアチコチに取れそうだが相変わらずのガレが続き沢そのものの美しさは無い。
我々は稜線での水切れを心配してわざわざ水を取りに戻ったが、結局のところC2500くらいまでは水が取れた。
重たい水を担ぐ必要も無かったし余計な労力を費やしてしまいました。
その後も延々と疲れるガレ登りの後、ヘロヘロになって最後の最後でやっと北アルプスらしい草原となり稜線に抜けた。
シンノ谷、遡行価値という点ではう~むと唸ってしまうかもです。
源頭部を除けば美しくもないし滝登りの楽しみもほとんど無し。
行程の大部分が不安定なガレ歩き、巨岩のガレも多くなんだか疲れる沢です。
登山道の喧騒を離れて、易しく稜線へ達する手段としてはまぁ使えるという程度なのかな?(魚も少ない。)
稜線に着くとガスの切れ間に雄大な景観が現れた!
相変わらず山座同定など出来やしないが、森林限界上の大迫力の山々と雄大な草原はさすが北アルプス!と唸るものがありました。
スキーで来たらどんだけ気分良いだろうか!
尾籠な話で恐縮ですが、山行出発数日前より腹を下して体力が低下しているところにシンノ谷のガレ歩きで稜線に着くだけでもヘロヘロ。遡行中も頻繁な納税催促💦
メジャーな稜線はいったい何度「コンニチハ」したでしょうか。
せっかくの美しい景観だが熊鈴に悩まされながら歩く。シンドイ💦
今日はどうしてもどうしても五郎小屋のビールを買わなくてはならないけれど、黒部五郎への登りではもう白目を剥く情けなさ。
山行前には沢の地形図はそれなりに目を通すクセに、毎度毎度稜線一般道歩きの地形チェックは完全に頭から抜けている。
沢を抜けるともうモチが無くなるし疲れてるので、いっつも登りにさしかかる度に「ゲッ、登りじゃぁん😠もうダメだ!」なんてほんの少しの登りでも大騒ぎして2万5千眺め始めるんだから、もういい加減学習したらどうかと我ながら呆れますわ。
しかしシンドイ登りを終えカールへ降りて振り返り見ると、「なんじゃこりゃあ!」とお口あんぐりするほどの絶景なのでありました。
スケールがデカッ!
普段越後だ会津だと歩きまわっている泥臭い私には、この景観はハッキシ言ってこの世の物とは思われないものであり、「ウム。天国に来たのだ。」という確信を持ったのでした。
今年は悲しいかな残雪の「白」がなかったけれど、なんやら岩がボコボコ突き出た五郎のカールには息を飲みました。
神様仏様というよりは金髪ロン毛の彫りの深いGODが十字架を持っておわすのではないかという感じ。
つまり「天国」よりは「HEAVEN」ですわ。
日頃の懺悔でもしてみるか。アーメン。
何度も振り返って仰ぎ見るが立ち去り難し。
だけど今はそんなことより早くテンバに着いてビールが飲みたいよ神様お願い。
13時間行動でやっとビールにありついたけれど、沢に降りるには少々時間と気力が足りないようだ。
仕方なく超混雑の小屋のテンバの片隅にギリギリ陣取りました。(何張り分?💦)
タープなんてとてもとてもとっても場違いで肩身が狭い💦
ごめんねごめんねごめんね~💦
やっとの思いでゲットしたビールですが、消耗した我々はビールも食べ物もあまり喉を通らず早々に横になりました。
13日。
今日はのんびり7:30頃出発。
ほとんど荷物は減らず逆に余ったビールの分増えた感じだが、五郎沢を下り黒部源流を下降。
五郎沢はひたすらゴーロの沢で本流は河原下りだ。
沢に入るとやっとホッと落ち着きのんびり乾かしものをしたり、やはり我々は沢の子だと実感しました。
祖父沢を詰めるか三俣蓮華から回ろうかという話もあったんですが、昨日疲れてしまったのでもうすっかり稜線歩きへの興味を失いました。
以前赤木沢は詰めているので、薬師の左俣を詰めることにした。
本流を下っていると上ノ廊下を遡行し終えたパーティーがチラホラ。
昼頃薬師小屋に到着。
周辺でガラさん、勇ちゃんの姿を探したんですが会えず残念でした。
(後ほど本当に小屋の辺りでニアミスしていたことが判明。)
沢の下りで以前から痛めていた膝痛がぶり返してきたので、薬師小屋でビールを買い足し薬師左俣に入って30分位のところで今日は終了、昼テンとした。
3日目にしてやっと広くて快適なテンバにありつき、のんびりと釣りや昼寝を楽しみ盛大な焚き火の傍らでイヤっつう程、ケンカになる程ツマミを作ってビールを飲みました!
シンノ谷や黒部本流にあんなにあったクレソンの姿は無く、お浸しの野望は消えた。
岩魚は全般に毛バリが有効のようでした。
14日。
薬師沢は最初は平凡だが思ったよりは大きな沢だった。
左俣に入り登山道の橋をくぐる
間もなく滝場が始まると、10mクラスの豪快な滝がいくつも連続してかかっている。
今回の山行でやっと滝らしい滝を見た。
どれも簡単に登れるかちょっとでも面倒な滝にはちゃんと巻き道がついていた。
今回は下調べもせず満足な登攀具も持ってこなかったが特に問題無し。
最後の方の滝では(どこの滝だかようわからん。)左岸に明瞭な巻き道があったが、腹まで(私は胸まで)浸かって釜を左から回り込み左壁から取り付きバンドをトラバり、流心を越えて登った滝があった。
先行したNASさんの採ったルート、小さな水流を跨いでヌメった細かいスタンスを拾うのだが、私には一歩が遠かったのでそれじゃあと手前のダブンダブンの流心に何気なく入った。
ところが、これがまぁ人生一番のシャワークライムとなり息が出来ませんでした。
シャワーなんていうヤワなもんじゃなく、頭から完全に怒涛の水中クライムで水圧に耐えお口パクパク前も見えずマジか~となりお助けを頂くことに。
今回の山行で登攀具?(といってもお助けだけど。)を使ったのはここだけでした。
必死に抜けたが体が冷え切ってしまった。(カッパ着りゃあ良かったなぁ。)
お隣の赤木沢と似たようなもんかと思っていたけど明らかに渓相というか岩の感じが違う気がする。フリクションを確かめながらペタペタと歩くシーンも多く、ガッチリと硬い岩の感じなんかからしてもなんだか上越あたりの沢に居るような錯覚をしてしまいました。
美しさという点では天下の赤木沢に断然軍配が上がると思う。
赤木沢なら沢靴さえ履けばハイカーでも登れそうだけど、薬師左俣は初心者向きでややこしい巻きやドロ壁草付ヤブコギも難しい登攀もなく易しいとはいえさすがにハイカーだけでは危険だと思われました。
滝場を抜けるとガラッと渓相が変わった。
稜線に向けて緑の草原の中を延々と小径のように沢が蛇行しているが、下りかと錯覚するほど平らなところがこれでもか!という位に延々と続いている。
こんなところに泊まってのんびりしたい!というような、こちらもやっぱり「天国」でした。
これが薬師左俣の真骨頂なのでしょう。
こんなところでのんびりと焚火を囲みグースカ昼寝でもしたいものですが薪は少なく岩魚は居ない。
そもそもガンガンもくもく煙を上げたら叱られるかもしれません。
上から丸見えです。
下山を急ぐ身としてはこの天国へといざなう小径はいささか冗長で長すぎる感もありました(^^;)
C2320の枝沢を詰めれば数時間の節約になると思われますがただの詰めになるかも。
毎度本流筋を詰めちゃう習性なのかやっぱりわざわざ一番高いところに詰めてしまい、北ノ俣ピークを再度踏み太郎の小屋で一息入れてから折立に下山。
天国の見学はぐるっと完結したようです。
途中、高山病で動けなくなった学生が居たけど無事に下山出来たでしょうか…。
余談ですが、黒部源流を取り巻いていくつか小屋があるので、沢水を飲む場合には注意した方が良さそうです。
小屋から垂れ流されている汚水を見てギョッとしました。
小屋下の各本流筋は少なからず汚染されている可能性ありと思われます。
また、数年前に目の当たりにしましたが、源頭部がぐるりと草原だし各沢が手を広げたようになっているので、雨の時の増水はあっちゅう間にもの凄いことになります。
なめると痛い目に!
下山後、大好きな魚津に寄って岩ガキ、バイ貝、刺身などの海鮮を楽しんでから帰宅。
岸壁から渓流竿をチョイと出してみたら面白いように豆アジが釣れてしまい(マイクロシマダイはもっといっぱい)、山のお土産が豆アジになってしまい「どこでナニしてたの?」と家族に変な目で見られちゃった夏でした。
そのうちまたGW山行の帰りにでも魚津に寄って、ゲンゲの唐揚げやホタルイカの釜揚げやカニと地酒なんかで山行成功の祝杯をあげたいものだと思っています。
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