奥多摩 小川谷支流 悪谷
2001年5月2日~3日
うど子
いよいよ沢シ-ズン開幕。
5月の会山行を間近に控えて、冬になまっていた体を易しい沢で馴らしたいと思っていた。
時は新緑、山菜も芽吹いているかもしれない!
しかし、悲しいかな当家はカレンダー通りの休日ではないのでGWの連休は世間様のようには休めない。
パートナーが見つからずさびしく一人ぼっちでの山行となる。
また、車の免許がないため場所もかなり限定されてしまう。
ガイドブックをしらみつぶしにあたり、「体ひとつで楽しめる沢」とあった奥多摩の悪谷に決めた。
林道歩きが3時間とかなり長いので、朝家を出たら1日目は入渓地点付近に寝て、翌日一気に登ろうと計画。ザックには酒や食料を詰め込めるだけ詰めた。
雨女の常だが、当日はお約束通りの雨降り。
なんとなく暗い気持ちで日原鍾乳洞から小川谷林道を進むとゲートがあり、工事の人に「今ここでデッカイ落石があり道路が陥没しています。沢も落石が大変多いので気をつけて。」とのご忠告をいただいてしまう。
へこんだ気持ちをなだめつつ、ぺったんこのテン場シューズ(水辺などではくナイキのあれです。)で歩き始めるが、歩きづらくてすぐに歩くのがイヤになってしまった。
と、そこへ工事用の車(白馬の騎士?いや、白い軽トラ。)が通りかかり、「乗るか?」と天使のささやきが。
もちろん、満面の笑顔(家族には見せない。)で有り難く乗せていただく。美人でよかった!
まもなく林道終点に着き、大幅に時間が短縮され感謝感激ではあるのだが、まだ昼であり寝るには早すぎる。
雨降りのせいもあり、今ひとつ雰囲気もしっくりとこないので二俣あたりまで行ってみることにする。
出合いを慎重に確認して少し進むとすぐにF1.10mとなるが、すでにここまでの間に何頭ものシカが倒れていた。(結局、最終的には10頭以上もの亡骸を目撃。)あたり一面シカの糞だらけで、非常にシカの多いところのようだ。
F1はややチムニー状で、直線的に水を落としている。
小さな釜にはシカが沈んでおり少し緊張するが、水流左のスラブ状から直登する。
落ち口付近で岩が頭上にかぶさり、ザックがつかえてしまう。
水流側に右足を一歩出して体を振りたいが、左手のホールドが若干甘くてザックの重さが気になる。
少し迷ったが、その場で慎重にザックを降ろして岩の間にギュッとはめこんで空身で1,2歩あがり、ザックを背負いなおして落ち口の上に出た。
皆様、荷物の詰め込みすぎは良くないようです。
F2.8mはなんとなく登って、すぐに二俣に着く。
よく目を凝らすと右俣にはワサビ田の跡らしき物が見える。 左俣へ進む。
ガイドブックにあるナメ滝群は良くわからなかった。
テン場になりそうなところを物色しながら歩いていくと、まもなく水が伏流してしまった。
2時近いので昼食をとるため水のある所まで少し戻ることにする。
ここで、今日中に沢を詰め上がってしまうか、沢中で泊まるかしばし迷ってしまう。
しっかり食事をとってからの行動となると、何とも半端な時間である。
初めての沢なので無理をせず泊まることにする。
テン場もしつらえ楽しく一人の宴会をするが、雨の中では焚き火をする気にもならず、山菜もないし、とてもヒマである。
いつしか眠ってしまい、あー良く寝たと起きると、なんとまだ夕方の5時だった。
今回はいつもと違い、タープではなくツエルト泊ではあるが、予想に反しものすごく寒いので、ペラペラのサマーシュラフではザックに足をつっこんでも熟睡できなかった。
寒くて長い夜を過ごして朝ツエルトから出ると、昨日伏流していた沢は増水して立派に水流が復活しているではないか。
ふと上流を眺めてびっくり、白く雪が積もっている! 寒いはずだ。
キツネにつつまれたような気持ちだが、雪が深くならないうちに詰めてしまおうと先を急ぐことにする。
あたりは昨夜から雪だったらしく、上流へ行くほどみるみる積雪量が増えて行くではないか。
足場が雪に覆われて歩きづらいことこの上ない。
滝もいくつかあるが、ホールド、スタンスともに雪がシャーベット状に付いていて、沢靴も半分凍ってしまいフリクションが効かない。
手は痛いのを通り越して感覚がよく解らなくなっている。
慎重に慎重にと自分に言い聞かせつつ滝を登る。
それにしても、沢はもっさりと雪に覆われホワイトクリスマス状態。
初めは美しさに感激していたものの、真っ白い沢の中でおばさんがぽつんと一人、「いったい私はこんなところで何をやっているのでしょう?」と次第に心細くなってくる。
時々、ドサリと雪が木から落ちる音が一層の静寂を際だたせる。
本当にガンガン降ってくる。もう40センチは積もっているだろうか。
ガイドブックにある「唯一ザイルのいる滝」らしきものは、水量も増え足場が雪に隠れ不安定なので小さく右から巻いた。
なんとか滝場は無事終わったようだ。 源頭部は白く埋まった沢筋をたどっていく。
踏み跡は雪の下なので、不安な気持ちを抑えつつ、コンパス頼みで胸までの笹と雪をかき分けていく。
ほどなく雪だるま状態で登山道にころがりこんだ時は、心底ホッとした。
雪の登山道を一杯水避難小屋にむけて元気に歩き出すが、2,3歩あるくごとに沢靴がダンゴになってしまい、雪落としがわずらわしい。
無事小屋に着き昼食をとっているうちに、なんと空はピーカンになってしまったではないか。
ヨコスズ尾根を下山するが、雪のかけらもない。
こんな悪天でも帰りには晴れてしまうという恐るべき雨女の私。
新緑と山菜という目論見は甘すぎた。
ゴールデンウイークの奥多摩は、おばさんの身も心も凍らせたのだった。
下山後、地元の方は「今頃こんなに雪が積もるなんて記憶にない。」とおっしゃっていた。
後日、Yチーフに「あそこはハシリドコロくらいしかありません。」と言われたが、ハイ、全くその通りでした。
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