越後 水無川 北沢 (会山行、集中)
2002,9,22-23
CL USAN、T岡、M井、うど子
今回の会山行は2泊のオツルミズパーティーと1泊の北沢パーティーがグシガハナで集中するという計画で、出発日が一日ずれることになる。
北沢は2泊で抜けるパーティーが多いようだがメンバーの都合で1泊でしかとれず、しかもおばさん連れの4人では一泊だと時間的に駒ヶ岳までは厳しいと思われたのでグシガハナ集中となった。
前日にオツルミズパーティーを見送り、北沢パーティーも出発前夜8:00には全員揃い、いつもより緊張感を持って早めに寝ることにする。
早朝4:00という我々にしては画期的なまだ暗い時間に、我々にしては相当軽量化したザックで出発する。
う~ん、なんだか山屋さんみたい! (いつもならまだ前夜祭中?)
オツルミズ出合の駐車場に車をとめ、ヘッデンで林道を歩き始める。
途中、私が忘れ物に気づき車まで取りに戻るというタイムロス、申し訳なし。
十二平の駒ヶ岳登山道入り口の少し先からは水無川沿いの踏み跡を行く。
この付近大規模な工事がず~~っと行われているが、年々林道が延長されているらしい。(沢屋以外の利用者はいるの?)
さて、デトノアイソメの少し手前で歩きずらくなったあたりから河原に入り入渓。
デトノアイソメには5:50着。雪渓はなかった。
ここにはテン場に絶好の台地があり、もし事前に雪がないのが分かっていれば、前夜ここに泊まるのも良いかも知れない。(例年であればたいがい通年で雪がある。)
見事なスラブで入る支流を眺めつつゴーロを行くと、暗渠らしき小規模な廊下があるが、水量少なく太股までで何ということもなく通過する。
オカメを分け、残置ハーケンのある巨岩を乗り越えて行くとすぐに御月山沢手前のゴルジュ帯にぶつかる。
時間が気になるので先の偵察には行かず、セオリー通り小ルンゼから巻き上がることにする。
燃える男?T岡さん先頭でルンゼから草付をトラバースし、残置ハーケン(1本!!)のあるところから30m懸垂下降。
更に念のためザイルを出して草付をトラバース、灌木から40mの懸垂でテラスに降りる。
ここ、というところにはたいがい残置がある。
御月山沢出合の本流には崩壊中のでっかいスノーブリッヂがかかっている。
遠くからドッスーンと腹に響く雪渓の崩壊音が何度も聞こえてきて心臓に悪い。
御月山沢をわたり、再び草付のトラバース。
「息止めわたった急な草付き振り返る」なーんて一句詠んでいる場合ではない。(ちなみにこの句は気に入ってるんですけど(^^;))
30mの懸垂で10:25やっと沢床に下り立つ。この巻きに3時間半もかかってしまった。
すぐに西沢出合となるが、この滝も登れずまた巻きである。
前方には関門の滝らしきものが見える。
左岸にはスラブが続き、ここもトラバースルートになるらしいが、我々は右岸の草付からブッシュに入り巻く。 関門の滝やや手前で沢に戻ることにする。
先行するUSANは途中までうまくルートを拾いクライムダウンしたが、残る3人は懸垂で下りた。
途中残置があったのでそこからは全員で40m懸垂下降する。
遠目には迫力満点の関門の滝も、近づいてみると左壁から楽に越えられそうである。
雲行きが怪しくなってきたが、12:10T岡さんリードでザイルを伸ばす。
1ピッチでは少々足りず、途中でザイルを繋ぐ。
全員が登り終えたのが13:30。今にも雨が降り出しそうだ。
滝上にはくねって流れ落ちる4段70mのナメ滝が控えている。
それにしてもこの沢はスケールが大きい…
関門の滝上の落ち口をわたり、くさった残置スリングのある右壁から越える。
そのまま右のブッシュ伝いに登り、上部の急な小岩峰から巻く。
雨がとうとう降ってきた! 近くに見えていた真沢との出合も、またたく間にガスに覆われ見えなくなってしまった。
視界がほとんど利かない。もう少しなのにと気持ちがあせってくる。
懸垂のザイルをセットする間に、いざというときのためにビバークできそうな場所を探すが、出合はすぐ目の前なのでこのまま進むことにする。
40m懸垂の後、20mの斜め懸垂で沢床に立つ。
30mのナメ滝をフリーで楽に越えると、壮大なスケールの北沢・真沢の出合である!
唖然と見上げる。
360度のすり鉢みたいな大スラブの中に、空から2本の巨大スラブ滝が降りてきている。
沢というよりも神様の御座をこっそり眺め、無断で手を触れているような畏れ多い感覚にとらわれた。
この時点で16:15、本来ならばもう少し先に進みたいところだが、この天気では無理は出来ず両大滝の出合いである大伽藍の隅っこに泊まることにする。
100m大滝基部のテラス(?)のはじっこを少し整地しフライを張る。
なんというロケーションのテン場であろうか、すごいところだ。
まだ小雨、わざわざ巨大すり鉢のド真中まで進み滝頭の中央で、下流に向けて小用を足す(^^;)
う~む、感慨深い。沢屋って良いもんだ。神様ありがとうございます!
軽量化したはずのザックからなんだか色々な物が出てきて、結局いつものような宴会になった。
それにしても予想より早めに天候が崩れてしまい、明日の遡行が危ぶまれる。
オツルミズパーティーは大丈夫か…ひょっとしてもう駒まで抜けてくれただろうか…そうであってほしいと願いながら眠りにつく。
夜半にトイレに起きてびっくり、雨の中ふと夜空を見上げるとなにやら白くて大きいものがうごめいている。
な、なんと昨日は張り付くように大滝をなめていた水が、今は超巨大ひょんぐり滝となって竜のように空中に太くバウンドしながら放出されているのだった。
幣ノ滝も真っ白ドバドバ、下部は巨大な地球洗濯機のうずしお状態。
これは普通では想像も出来ない光景だ!唖然。
すごいというよりも恐怖!
すでにシュラフの下にはじゃぼじゃぼ水が流れていて、バーナーなどもひっくり返っている。
遙か頭上の樹林帯からも時々ザバッザバッとお水が…確か上流にはまだまだ雪渓が残っているはず…
まさか雪渓のかけらがぶっ飛んで来るのでは…?
あわてるオバサン、それを白い目で眺めながらおじさま達はのんきにベーコンなぞチリチリと焼いている。
あたりがうす明るくなってくると、おばさんがあまりにわめくので、残る3人の紳士達はしぶしぶ出発の準備にとりかかる。
さすがにもう沢筋には関われないので、グシガハナまで尾根伝いにヤブコギでエスケープせざるを得ない。
文字通りの脱出行。
もし昨日欲を出して下手なところでビバークしていたら、簡単には帰れなかったところだ。
良いところに泊まったものである。
この体験以降、私は天気がアヤシイ時は必ず地続きで逃げれる側にテンバを求めるようになった。
増水が予想されるときの計画と行動もより慎重になった。
山の掟には勝てない。
無知ほど自分と仲間を窮地に陥れるものは無い。「無知の知」
神なる自然の手の平で遊ばせていただく我々が謙虚を忘れたら「死」だ。
思えばここまでは沢床にいる時間はほとんどなく、高巻きの連続だった。
それなのに、これからまたグシガハナまで延々とヤブをこぐハメになるとはトホホである。
地形図を眺め、テン場のすぐ裏手から、西沢と北沢の中間の支稜にのるべく、まずは簡単な階段状スラブをいく。
弱点の少ないこの北沢の中で、このテン場の裏手がピンポイントの弱点となっていたのは全く以て幸いなことだ。
藪よりも楽に高度が少しでも稼げて助かった。
まもなくヤブに突入。最初は大したこと無かったが、逃げ場のない馬の背状の尾根を延々とグシガハナまで一直線にまっすぐ漕がなければならない。
だんだん空間は縦横5センチの方眼紙状の密ヤブになってくる。
ハイマツ、シャクナゲ、ネマガリ、その他その他その他!
これにからめ取られている限りは命の心配はないが、突っ込む気力が失せてくる。
また、とても冷たい雨で、体を動かしていても芯から冷えてしまう。
嗚呼、マニアックというよりもMというかコア。
いったいこんなところでなにやってんだ私は…と言う感じだ。いや、微妙に哲学的と言えなくもないかな。言えないな。
なんとUSANは前回は大鳥西ノ俣でも増水で、今回以上のヤブコギで逃げたという。
MでかつコアなUSANすらも満足させてしまうほどのヤブコギを終え、やっとの思いで雨のグシガハナに到着したのは14:00になっていた。
いったい何時間ヤブコギしてたんだか。(9時間!)
13:00集中の予定であったが、オツルミズパーティーはいなかった。
無線がとれないのが気がかりだが、多分先に下ったのだろうと足跡を探しながら下山にとりかかる。
雨で滑りやすい登山道をゆっくりと下り、十二平に16:40着。
オツルミズパーティーは下山していなかった。
まあ増水で停滞しているのだろうとは思いつつも、場所が場所だけに心配である。
ベーステントを張り直して当会のシンボルちゃぶ台を入れ、とりあえず下山を待つことにする。
心配の夜を過ごしたがうど子とUSANは 申し訳ないが早朝一旦帰宅させていただき、用を済ませ次第戻ることにする。
ありがたいことにT岡さんとM井さんが翌日も残って下さった。
自宅で連絡を待っていると午前中に無事下山の連絡が入り、ほっと胸をなで下ろした!
増水で相当苦労したが、最後まで詰めて駒の小屋にお世話になっていたそうだ。
ああ、本当に無事で良かった!
今山行は雨に阻まれ完全遡行は成らなかったものの、お陰様でとても良い経験が出来ました。
今はなぜか充足感を味わっています。
今回の山行では学んだことも多く、ぜひ今後の山行に生かしていけたらと思います。
瞼にこびりついた光景はいつまでも消えることがなく、この山域の魅力を強く感じています。
また、自分がこの山行に参加して良いものかどうか直前まで判断が付きかねたのですが、迷う私の背中を押して下さった山行リーダーのNさんはじめ、皆様に感謝します!
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