下田山塊 笠堀川 光来出沢 シンズ沢
2008.9.13~15
USAN、T岡、うど子
いやぁ、楽しい沢でした。
9月の連休、もっとホネのある沢に行こうというモットモな話もありましたが、結果は大満足!
第一、光来出なんて名前が素敵です。
初日は下山口に車をデポしてタクシーで笠堀ダムへ。
この辺り粟ヶ岳登山者用の?駐車場がいくつもありますので便利ですが、待ち合わせの際など間違えやすいのでご注意。
また、最近では地形図に無い新しい登山道も開かれているようです。
出発の朝、地元の紳士にとても親切にしていただき助かったのですが、お名前を聞きそびれてしまいました。ありがとうございました。
ザックを背負うとポツポツと雨が…。
予報では初日は曇り、翌日は雨、下山日に晴れということだったけど…なんだぁ?おいおい…。
湖岸道を淡々と進み、スラブの見事なウルイサドリを過ぎると、道形ははっきりとしてるもののヤブがうるさくなってきます。
雨脚がやや強まったかな?この沢は上流部が放射状に分かれ水を集めるタイプで、しかもスラブが結構発達しているので雨はいやなのです。
明日はもっと降るんだろうなぁ。あ~あ、なんだかテンションが下がってしまいます。
だけど居ました。元気な人が!
「関係ないですから。俺は釣りに来たんですから!雨なんてねぇ、どうでもいいのよ!」
と白根沢の大釜でやおら竿を取り出し、とってもいいかげんな仕掛けをぼちょ~んと釜に振り込むといきなり竿が満月!おぉっまさか!とびっくりして見ていると満月の竿がバキッと真ん中から折れてしまったのです。
でもご安心下さい、オンボロの竿で地球を釣っただけでした。
俺は釣りに来たのだ!と言ってましたが、なるほど一投目からこれ以上ないという大物を掛けて大事な竿を折るとは。
竿が悪いんだかそれとも…腹がよじれるくらい笑わせてくれました。
ここからは竿を出していきますが、雨なので面倒なところは道にあがって巻いたりしながら東又沢出合いを目指します。
が、とにかく全然進みません。
今日は東又沢出合い泊まりという気楽さに加え、竿を折ってしまったTさんがNさんの竿を借りてあろうことか太った尺上をあげてしまったからで、それを見ちゃったNさんも(元?)釣師の血が騒いでしまい、男ふたり頭に血がのぼってしまったわけで。
「おいっ!なぁにやってんだ。そうじゃないよ、竿貸せ!」「あぁっ、ちょっとぉ!もうっ、そこじゃありませんよ!俺にやらせてください!」の連続。
冷静な私の「早く行こ~よ~。雨だしさぁ。」はもちろん二人の耳には全然届きません。
ま、いいか。
これこそ欲しいものは手に入れるのだ!という男の子の本能のひとつであり、たとえば日本の経済発展のための原動力の主因のひとつに違いあるまいと妙に感心した次第です。
ウニせんボリボリかじりながらブヨなど払いつつ、慈愛に満ちた美しくも賢母のような優しい、そして少しだけ白い眼で二人を高いところから見守っていたのでした。
超まったりの遡行?ですが、無事に予定の東又沢出合いに到着。
ここまでは晴れていれば沢通しでも楽しいけれど、寒いときや面倒なときは上にあがるとちゃんと道がついているので安心だし時間短縮になります。
東又沢出合いは軽いゴルジュ状の地形の中、ちょっとした台地になっていて増水にも安心して泊まれるところですが、ブルーシートがデポしてあったり、焚き火跡に空き缶の燃え残りがたくさんあったりして悲しかったです。
このゴミは我々が持ち帰りましたが、せっかくの美しい手付かずの自然の中に人工物やゴミがあるのってものすごくがっかりしてしまいます。
明日も雨だともしかしたらここで停滞かも…という雰囲気でしたが、なんとか雨は上がったようです。
しかし、いつ降り出してもいいように準備万端整えて眠りにつきました。
夜中も結局雨は降らず、なんと朝9時出発。
あぁ、この自由な沢旅に乾杯!という感じなんですが、出発仕度の最中に某T氏がとっても自由な姿でここにはとても書けないことを目の前でしかも2度もやっていて、笑いすぎて腹が痛かったのでした。
さて朝一から当然手には竿。
「今日はゴルジュを越えようね。」という私に、「あのねぇ、俺は釣りに来たんです。ゴルジュなんてどうでもいいしねぇ、泊まるのなんてどこでも良いし、いつ帰るかなんて意味ないでしょ。」って、もしもし。ほんとこの沢はそんな過ごし方が作法ってものかもしれませんが。
青空が顔を出して来ました。光来出とはよくぞ名づけたり…いくつもの深い碧の釜や水の流れが自ら光を放っているかのようです。
渓に酔い、無心に渓と戯れる。
それが許される渓です。
イワナがそこらじゅうを走っていて男性二人は目がぶっ飛んじゃってます。
Tさん、崩嵓沢出合いの大釜からもデカイのを釣り上げてしまいました。
もう、うるさいうるさい。
柳丸淵などの大場所が続々とミニゴルジュ手前まで続き、心奪われる見事な渓の姿に皆すっかり心が開放されてしまって渓にむしゃぶりついてます。
水に入ったりへつったりと楽しいこと!
ありゃまぁ、Tさん、まぁたデカイの釣ってしまいもう大変。ねばり勝ちですよ!
ペアのオスを掛けたらしく、でかいメスが追いかけてきました。
それを見たNさん、またまた頭に血が…大の大人ふたりの顔は全く子供にかえってしまっていて笑っちゃいます。
そういえば当会を「釣りの会」と思っている向きもあるやに聞いておりますが、決してそんなことはなくて普段は遡行の合間にちょいと竿出したりするくらいで釣りはいいかげんです。
あくまでも都岳連加盟の山岳会であることを申し添えます。
10mの斜瀑は左壁はロープが必要で面倒なので、右から簡単に超えました。
すぐに写真で見たことのある狭く短いゴルジュの入り口です。
ほんとに狭いので増水したらどうなっちゃうのか見事でしょうね。
右からも左からも楽に巻けそうですが、水線で行くことにします。
どチビにはギリギリのツッパリです。
途中の3mCSもツッパリなどで越えようとしましたが、昔ながらの日本人体型ではチト厳しい。
手足の長い人は有利です。
更に寸の足りない私のことを思い出してくれたようで、無理せずちょい手前の右壁のクラックに空身で足を突っ込みTさん先頭で巻きました。
ほんの1,2歩が見た目よりしょっぱい登りでした。
巻けば簡単にゴルジュの終了点に降りることが出来ると思います。
いい時間になったので、テン場を探すと右岸の枝沢出合いに絶好のテン場を発見。
すでに整地してありましたが、手を加えて更に快適な寝床が出来ました。
おかげさまで一日なんとか天気ももって、焚き火も盛大。
中秋の名月のまわりに雲が走って幻想的です。
いい夜でした。
最終日は頑張って6時前に出発!これが核心。
やった、晴れてる。
朝いちから小滝の連続で、ガンガン高度を上げていきます。
「どっこいしょっと」と疲れはするけど、問題になるところはなくどれも快適に越えてゆくことができます。
あれよあれよとどうやら両門の滝とおぼしき二俣に着きましたが、どう見ても15mはなさそう。
水量はどちらかといえば左が多いかな?と言う感じですが、滝の上は右の方が開けてるように下からは見えました。どっちに行こうかと鳩首会談で迷ったけれど、結局左を選びました。
滝の左の窪から上がりますが上部がボロいので、Nさんが右手のえぐれたところから潅木をつかんで強引に腕力であがり、後続はお助けをもらいボロい正面からゴボウであがりました。
詰めも近いとみえてめっきりと水が減ったなと思うとすぐに二俣。
ゆっくりと休んだあとは右へ入ります。
と、すぐにドボドボと水の湧き出る明らかな源頭に到着し、喉は渇いてないけれど記念にみんなで水を回し飲みしました。
ん~、ウマイ!ような気がする。
そこからぱたっと水が涸れてしまいます。
さぁ、いよいよヤブコギです。
はじめのうちこそ潅木を使う急な登りでしたが、尾根に乗ってしまうとすぐになだらかになりました。
ヤブは薄くてしかも踏み跡なのか足元はかなり歩きやすく、思ったよりもずっと楽勝です。
途中、内緒のお宝までゲットしまいました。ウッシッシ。
ふと見上げるとはるか向こうに雨量施設らしきものがありますが、う~ん、まだまだだなぁ…などと思って無心に進んでいくと意外にあっけなく着いてしまいました。
ラッキー! 三ツ鼻から粟ヶ岳までははっきりと道がついていましたが、途中「何でぇ~!」と悲しくなるほど急下降しなければなりません。
そしてまた「何でぇ~!」と言いながらの急登を終えるとまもなくハイカーのくつろぐ粟ヶ岳山頂でした。
思ったよりも早く山頂に到着できて上出来です。
ガスの切れ間より矢筈の姿も現れました。
この沢は一泊二日でも十分こなすことができると思われますがそれは野暮。
渓中二泊して沢を味わいつくすのがお薦め。
このあたりの山域、遡下降も楽しそうで興味深々です。
素晴らしかった光来出沢の余韻に浸りながら下界に駆け下り、汗を流し、〆には塩漬け山菜の炒め物と銘酒「粟ヶ岳」、そして地元下田の蕎麦をひっぱってもう完璧です。
(以下うろ覚えの大雑把な時間。間違ってるかも。13,14日は釣りばかりしていたので全く参考にはなりません。)
[13日] 笠堀ダム車止め発7:40 --- ウルイサドリ9:30 --- 東又沢出合15:30
[14日] 東又沢出合発9:00 --- 狭いゴルジュ上の枝沢出合テン場16:20
[15日] テン場発5:40 --- 三ツ鼻雨量施設9:50 --- 粟ヶ岳ピーク10:50
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