北アルプス 北鎌尾根
2008/5/3-6
CL USAN、トミー、うど子
雪は多いが融けるのも早いと言われるこの年、「どうせ行くなら由緒正しく末端から行きたい!」というルートにこだわるトミーの意向に従い、湯俣から入山。
信濃大町のタクシー会社に車を置かせていただき高瀬ダムへ。
ワサビやフキノトウに何度も吸い寄せられ、寄り道して荷物を増やしながら湯俣へ3時間。
途中、なんと見たことある顔が!
ありゃ?先日西穂で遊んでもらった名古屋のお兄さん!
お互いにビックリ!
千天出合いまでは、水量が心配だったが、我々は沢屋だ!とばかり沢靴を履きカッパの裾をテーピングでグルグル巻きにし、沢通しで行くことにする。
他パーティーが悪い巻きのヘツリルートへ取付く中、ギャラリーを背に颯爽と「俺たちゃ沢屋だぜぃ!」とばっちりスクラム渡渉を決めたと思いきや、最後にうど子が水没!ぎゃはは~!
冷水の洗礼を全身に受ける。(冷たいんだよぉ!)
濡れたザックを背に約一名は震えながら出合いを目指すが、河原は残雪に覆い隠されいつ踏み抜くかヒヤヒヤもの。
巨岩も隠されているので油断できない。
だが約一名(CL!)は呑気にコシアブラを探しながら歩いている。
数回の渡渉はあるが深いところでも股下、幸い泳ぐほどの水量では無い。
でも水はキンキンに冷たい。
沢通しは正解だったようで千天出合いには一番乗りだ。
ヘツリルートは年々悪くなってるようだ。
時間は早いが今日は我々はここまで、早速焚火を熾し装備を乾かしまったり宴会だ!
名古屋のお兄さんたちも到着、今宵は一緒に飲みましょう!
ワサビとフキノトウを早速料理し、軽量化したはずのザックからツマミも続々。
事前の打ち合わせで「ギリギリまで軽量化しよう!」という話をしていたはずだが、重たいナイフや着もしない夏用のTシャツがザックの底から出てきたり…
そもそも「竿を持って行きましょう!」なんて言ってた〇ホな〇ミー(^^;)
「フライパンは梁山泊のシンボルです!」と意地でもフライパンを持ってきたし(^^;)
あぁ神様、今日だけはお家芸のまったりをお許しください!
さぁ、天上の沢に千丈の狼煙を上げろ!
翌日、まずはP2を目指す。
秩父と勘違いしてしまうようなパッとしない取付きを上がる。
GWとあって入山者が多い。
ちょっとした休憩のたびにアホな馬鹿話が長引いてしまい、ついつい無駄に時間を消費してしまう。
気温が上がり雪は腐りまくりズボズボ、時々シャラシャラと小さく雪崩れてくる。
アップダウンを順調にこなしていく。
北鎌のコルからは人が増え一気に人臭くなり、我々からしたら下界のような賑やかさに感じてしまう。
独標手前のピークに着くと、先着した名古屋のお兄さん方が我々の為に場所を開けておいてくれた。
せっかくなので時間は早いが泊まることにしよう!
目の前には硫黄尾根、そしてドドーンと明日登る独標が控えている素晴らしいロケーション。
怪しげな黒雲が流れてきているが、取りあえず今日は見ないことにしておこう。
連日フル行動のつもりで気合いを入れて来たのだが、天気が良くトレースもありなんだかあっけなく、今日も昼テンでのんびり昼寝付きのまったり宴会。これでエ~ンカイ?
狭いテントの中、USANのイビキ攻撃とトミーのブツブツつぶやき攻撃でうるさくて眠れない!
真ん中は失敗だ。
翌朝、雪が腐る前に早出したつもりだが、そもそも気温が高く雪は腐ったままだったようだ。
独標には大人数のパーティーが取付いており、既に順番待ちが出来ている。
最初我々もその列に並んだが3番目。
この頃から急に天候が悪化しだした。
1パーティー目の登攀がなかなか終わらない。
しびれを切らした我々は、千丈沢側から巻くことにするが、ここの雪が腐り切っており悪いのなんの!
ピッケルを刺してもスカスカでスケスケの黒い岩肌には水がしたたっているのが見える。
気温が高くどんどん雪が融けていく。
靴の半分程度しか足を置く雪が無いし、中間支点も取れずピッチも切れないのでビレイ無しのフリーだ。
下手したら全員仲良く腐り雪と共に千丈沢へまっしぐらあの世行き。
覚悟の上気合いを入れて慎重に行く。
どうやら日頃の行いと顔が良かったようで無事通過。
トラバース後は易しいミックス斜面を2度ほど念の為ザイルを出して尾根に復帰する。
だが天候は更に悪化しており、念願の槍のお姿は拝めない。
横殴りのミゾレで視界も悪化、現在地がイマイチ良くわからなくなったが先に進むしかない。
カッパはびしょ濡れ、震えながら凹角をザイルを出して登るが、やはり雪は腐っておりビレイ中に足場の雪がゴッソリと落ちてしまい肝を冷やした。
トップを行ったUSANが「お~い、トミー、先に行け~!」と叫んでいる。
「はぁ?」と言う感じで次々に登っていくと、そこにはもう登るべき斜面は無く、祠が鎮座していた。
「わっ、着いた!!」
真横に吹き付けるミゾレでまともに立つことも目をちゃんと開けることもかなわない、思い描いていたどの到着シーンとも違うが、ギャラリーも無い我々だけの嬉しいピークがそこに有った。
ここまで一度も槍のお姿を拝むこと叶わず。。
天候は更に悪化、長居は無用と梯子を下りるが、いっとき突風が吹き私の手が梯子から離れ体が剥され宙に浮いた!
「死んだ。」と観念したが次の瞬間着地。
なんと運良くそのすぐ下は地面だった。
さぁ、小屋を探そう。視界が無く小屋がどこにあるのか分からない。
困った。と思った次の瞬間少しだけ視界が出て、なんと手が届くほどのところ、我々の真ん前が小屋の玄関だった。
今日は下山を止め、無理せず泊まることにする。
続々と我々同様低体温症寸前のずぶ濡れ北鎌組みが小屋に到着してくる。
夜はみんなで大宴会となった。
翌朝は快晴。放射冷却で良く冷え込んだ。
やっと槍のお姿が拝めた。
さぁ下山だ!
あとは温泉、焼肉だ~!とルンルン気分でガチガチに固まった荒れた斜面を下っていると、下から「救助要請!ヘリ要請っ!」と誰かが叫んでいる。
驚いて、後続の登山者経由で小屋に伝えてもらう。
倒れている方を見ると、なんとさっき我々の目の前をスキーで横滑りで下っていらした方ではないか!
我々は救助活動に協力することにし、マットで保温、三角巾で割れた額を手当てし、順番で心肺蘇生を行った。
斜面の下まで滑り落ちた要救者の装備を取りに行く。
我々に続く協力者は居ない、ただ野次馬で取り囲んで見ているだけだ!全く何ということか!
後で知ったことだが、残念ながらお亡くなりになったそうだ。
慎んでご冥福をお祈りいたします。
我々も浮かれて緩んだ気持ちを引き締め、下山の途に就く。
途中、小屋があるたびにビールを買っているのはもちろんUSANです。
上高地から車のある信濃大町に戻る。
下山後に焼肉ビールで乾杯!
あぁ、何度このシーンを思い浮かべて居たことか!
この乾杯、このビールの一口は疲れた体と充実感で一杯の心に沁みて、もう最高にうまかったです!
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