徳本峠越え

2012/11/23~25


うど子


今年は雪が早い。

暑い夏がいつまでも続いたと思ったら、秋は短くて駆け足で冬がやってきた。

どうも最近このパターンが多いと思うのは気のせいか。


いつもだと大体この季節にはナメコ採りに血道をあげてしまい、「岩トレやれ~!」なんて叱られているのが常だったのに。。

ナメコは早々に雪の下に入ってしまったりして。


11月のこの連休は大好きな窓明山あたりでナメコをとりつつ、黄葉のブナの道を歩く算段をしていたのだが。

会津はおろか、谷川も飯豊もすっかり雪がきて、もはや山スキーの世界。

しかもこの3連休、新潟方面の天気はダメなのでした


毎度のことだが、山行場所を決めるのは難しい。


あれこれ調べ逡巡を重ね、いくつかの不安要素になんとか対処できるとの目論見がついてやっと計画ができあがる。

私にとっては計画が出来上がった段階で、その山行は8割方終わりかも。

あとは現地で汗をかくだけ。

どんなにちっぽけでショボイ山行であっても何から何まで自分で作り上げた山行が心地良かったりする。

もちろん、会のバックアップがあってこそのものですが。


さてさて急遽探した苦し紛れの転進で、「徳本峠越え」なるものに行ってみた。

情報を首っ引きで漁った結果に引っかかったのでした。

こちら方面は初日を除き天気はまずまずとの予想。ラッセルも許せる範囲かなという感じで。


そもそも北アルプスなんてメジャーな山域、まぶし過ぎてようワカランのですが、どうやら徳本峠越えというのは由緒ある上高地への古典的ルートらしい。へー。

上高地っつうとハイカラで、普段泥まみれ生活のワシには縁遠いところでありますが、徳本峠越えなら地味だから緊張しないで行けそうな気もするし


今回の不安要素は積雪量。

すでに例年の年末年始以上あるようで、徳本峠小屋は半分雪に埋まっているようだ。

冬の記録を見ると、どうやら積雪期は徳本峠への取付きが分かりづらいらしい。ふぅん。

さすがにまだ11月なので、雪が多いと行っても南面だし雪崩の心配も大丈夫だろう。

ラッセルに時間がかかり過ぎるようなら引き返せば良いやとの心積もり。かなり適当。


倒れかけた(失礼!)岩魚留小屋の軒先で嘉門次たちを偲び、ひとり静かに杯を傾けようではないか。

ラッセルに疲れたどり着いた徳本峠小屋で嘉門次よろしく「できました、できました。」とつぶやこうかな。

なんて感じで。


前置きが長い。

(前置き段階が8割なもんで)


メジャーな山域も、この季節には訪れる人がぐっと減るようで、電車/バスは「冬時間」。

つまり、夜行はなくなり早朝発もなくなり便数が減り不便になると言うことだ。


高速バスで松本駅ステビバ。

10数年ぶりの松本駅ステビバ。ずいぶん立派になっていて驚いた。

駅構内には全身頭のてっぺんからつま先までトイレットペーパーでぐるぐる巻きの真っ白いジャミラ人間がゴロンと寝ていました(防寒のためと思われます~)

かなりビビりましたが、私とて大差ありませんのでお近くで失礼しました


翌朝雨の中出発。はぁ。

新島々で雨脚が強まり気持ちは日和ったが、バス便の都合でイヤでも予定通りの行動をせざるを得ず


雨の中、こんなことだろうと持ってきたゴム手をしっかりはめてトボトボ登山口に着くとなんと先行者と思しき車が一台。

まさかこの時期先行者が居るとは思ってもみなかった。

地味好きのご同輩がいらっしゃるようだ。(一度もお会いすることはなかったけれど。)


岩魚留小屋までは雪は無し。


まだ昼過ぎだったけれど、予定通りテントを張ることにする。

酒とツマミ満載で荷物が重かったからだ

雨はほぼ止んだが、ガスっている。

往時を偲ばせる昔ながらの小屋。

果たしてこの冬越せるのだろうかというほどのたたずまいであった。

「岩魚くんせい500円~2000円」なんて看板があった。

釘討ちされていて小屋に入ることはできない。

氷結ストロングアルコール分8%(ビールより酔えますね。)を片手にあたりをうろうろ徘徊する。

先人たちもここで憩ったのだろうかなどとノスタルジーに浸っていると、なぜか我が親分、深瀬名誉会長のハーモニカが無性に聞きたくなりました。

若い人にはなじみが無いかもしれないけれど、山の唄のハーモニカ、これがまたいいんだな。

酔っ払ったのかな。

往時を偲んで鴨鍋などウマイウマイと調子こいていたら、事件が起きた。

痛て~っ!と思ったら鍋がひっくり返っている!

おでことほっぺたが痛い。火傷の様だ。


どうやら座ったまま眠ってしまったらしく、おでこからぐつぐつ煮える鍋に倒れたらしく

参った参った。


焦って事故処理のあと飲み直すあぁ、反省。


翌朝起きると小雪が舞っていた。

どうやら上はずっと雪だったようだ。

おでこの火傷は糜爛状、寒さが凍みて痛いのなんの。天下御免の…(^^;)


先行者は足跡から察するに男女二人かな。

岩魚留小屋の上からは雪を踏むようになる。

徳本峠への取付きを過ぎた辺りから雪は深くなる。

ありがたくトレースを使わせていただく。

先行の方もワカンを使っているようだ。

ラクをさせていただき感謝なのだが、なんだか拍子抜けなんてバチ当たりなことも思ったりして。

峠まであと200くらいからはトレースがあってもワカンの世話となり、ほぼ膝ところどころ股までとなる。


このころになるとやっと晴れ間が出てきた。


昼頃に徳本峠到着。

小屋はやっぱり半分埋まっていました。

周囲は吹き溜まってるので面倒なので小屋内部は確認しませんでした。

小屋の上部のにらみつけるような目玉の模様が印象的でした。

明神が目の前にドカンと鎮座するが半分雪雲に覆われていました。

風も強く寒いので長居はせず明神に下山します。

ここもワカン。

霞沢岳方面にもトレースあり。


水のとれるおしゃれな小梨平で幕営。

今日は豚キムチ鍋。軽量安価簡単スタミナうまうま鍋を考案?しました。

これから入会される方にはもれなく伝授したいと思います!


翌朝の上高地は放射冷却で凍てつきました。

何もかも凍てつく静寂の上高地、明神、穂高の山々、焼岳が朝日を浴びて神々しいほどに美しかったです。

寒いというより痛い!

テントのファスナーも凍り、水分全部凍っちゃってまるで八ツにでも居る気分。

早々にテントを後にし、坂巻温泉であったまり松本へ。

坂巻温泉はかなり気に入りました!

おでこの火傷に温泉がしみた。


冬の上高地はおしゃれでした。

しかし車道が延び高級ホテル立ち並ぶ姿はどうもしっくりと来ず、思ったよりも更に地味だった徳本峠越えの方がまだ自分には合っているようでした。


松本では予約した高速バスの時間までなんと5時間時間をつぶすハメとなり、やっとバスに乗ってからは渋滞にハマリ最終電車に乗れるかどうかギリギリ。

これが間違いなく今回の核心部となったのでした。


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沢登り山岳会 遡行同人 梁山泊 - 山をまるごと楽しむ!

遡行同人 梁山泊は「沢登り」を中心に、山スキー・岩登り・アイスクライミング・雪稜登山など、四季を通じて山をまるごと楽しむ山岳会です。拠点は東京で、安全登山を心がけており焚き火、山菜&きのこに興味がある方、未経験者・初心者も大歓迎です。