会津 山毛欅沢山
2007.5.4~5
うど子
前置きの前置き。長い文章お許しを…(汗)
前置きその1.
第一核心部(出発までのエピローグ)
世間はゴールデンウィークだが、我が家はダンナの仕事の関係で毎年連休とは縁がない。
しかぁし、家族の顔色を窺い無理やり一泊の山行をゲット!さぁ、どこに行こう?!
急遽、あれこれと悩んだ末に選んだのがここ、会津の山毛欅沢山。
どうやら稜線にはブナのパラダイスが広がってるらしい!何より名前がお気に入り!
情報も少ない上に電車・バスのダイヤを調べるだけでも明日の今日では時間が足りず、おあわてさんです。
あ~、アプローチがホントに大変。夜行があればなぁ!
一泊しかないのに現地着が登る当日の昼前になりそうです。
早起きしてパッキングやら家事やら買い物やらを済ませ、無理やり昼過ぎには家を飛び出しました!これなら前夜に着けるぞ! どうやら予定の特急には間に合いそうです。
と、駅の電光表示板を見て目を疑いました…「特急全席指定のみ。全て満席。」ガビ~ン!勘弁して下さい!目の前が真っ暗です。
会津高原尾瀬口駅発の最終バスにどうしても乗りたい!今日中に着きたい!
係りのキレイなお姉さんに、つくり笑顔で他に電車がないか尋ねます。
ありました!鈍行が!何でも間に合えばそれで上等!ふ~っ。
前置きその2(あぁ、くどい)
長々と鈍行に揺られ会津高原尾瀬口駅に到着。
今夜のビールを売店で補給し最終バスに乗り込みます。
乗客は私ひとり。
話好きのバスの運転手さん、若いときに同級生と箱根に行った話しまで延々と続きます…「でも、恋愛感情はなかった…」とか話はずっと続きます。
小立岩で下車して山毛欅沢出合をめざし真っ暗な安越又川林道を歩きます。
橋を渡るとだだっ広い広場になっていて大きな建物もあります。工事の基地でしょうか?
さぁテントを張ろうと準備していると、雷とともに大雨になってしまいました。
良く見るとおあつらえ向きに大きなドカンが並んでいるではありませんか!ラッキー!
一夜のドカン生活なかなか快適です。
4日6:30。雨も上がり快晴。
さぁ、出発!
明るくなったので、ドカンを後にし現在地を再確認し山毛欅沢をたどることにする。
ドカンがいつしか沢に埋め込まれないことを神様に祈りながら歩く。
道は山毛欅沢の右岸、つまり対岸に続いているが、鉄製の橋?は雪の重みでぐにゃりと折れて雪代の沢の中である。
ありゃりゃ…歩き初めてまだ2,3分だというのにいきなり朝一の渡渉である。
でも大丈夫!こんなこともあろうかと沢用のウェットソックスを持ってきたのさ!
いきなりソックスが役に立ってしまい、喜んでいいのか悲しんでいいのか… 無事渡渉を済ませ再度歩き出す。
道があるのかないのか、やぶに覆われていてわからず雪代の沢に降りるのもいやなので、堰堤のすぐ先から尾根にとりつくことにする。
両手をつかう急な斜面だがブッシュを手がかりに登っていける。 例年通りであればこの時期は安越又川林道から雪があり、山毛欅沢もところどころ飛び石で渡渉でき、コゴミ沢(いい名前!)あたりまで雪に埋もれた沢をたどって行けるようだが、今年は寡雪で付近に雪は全くといっていいほど見当たらない。
沢は小さいがさすがにこの雪代では冬靴で渡渉というわけにはとてもいかない。
その代わり雪崩の心配は無い。
山毛欅沢山ピークのちょい北東から南東に伸びる尾根を延々とヤブコギする。
下向きの密藪である。帰りに備え、要所要所で赤布をつけることにする。
標高1000を越えたあたりで、水を汲むのを忘れたことに気づき愕然とする。
照りつける太陽の下汗だくである。もうこうなれば、少ない水をやりくりして最低でも雪のあるところまでは行くっきゃない!
「なんでいい年をして子持ちのおばさんひとりこんなことやっているんだろう」…と自問自答しながらのヤブコギはいつものことである。
標高1285のピョコを越え、藪をもうひと漕ぎすると… 出ましたぁ!!大雪原に山毛欅の点在するプロムナードです!
うひょ~!
遠く三ツ岩岳方面や、また小手沢山方面へと伸びる白いなだらかな稜線。
はるかな山々がぐるりと雄大に広がっています。
山スキーには垂涎の雪の斜面が右にも左にもそこにも向こうにも…そして、点在するブナ…期待以上の夢のようなところです…
1300を越えたあたりのだだっ広い山毛欅街道のはじっこに今宵の宿をしつらえる。
気に入ったところで眠り、そして目覚め、日暮れと日の出をゆっくり味わうのです。
そのためにひとりで山に行くといっても過言ではなく… そこで酔っ払うために苦労してでも出かけるといっても過言ではなく… まぁ、そういうことです。
うふふ…今宵は最高の酒が呑めるぞ!
ぼろい携帯写真では360度の雄大な景色が伝わりません。残念。
まだ11時前だ。テントも張り終え雪のテーブルもこしらえた。
さぁ、水を作らなくては!きれいな白い雪はありませんか?とモグラのようにあっちこっちと掘り返す。
さて、たっぷりと水も作ったしラーメン食べて山頂に向けて出発。
靴のエッジが気分良く決まる快適な雪質。
鼻歌るんるん♪ 雄大な景色のなか何者のトレースもない山毛欅街道を行く。
やっぱこれだぜぃ!ザクザク。
小沢山から山毛欅沢山、更に小手沢山方面へと伸びる穏やかな主稜線には北側に顕著な雪庇が見える。
主稜線へ出るにはこの期に及んで濃い藪を少しだけ漕がされる。
山頂直下。雪庇が崩れて融けてます。
稜線に出ると縦走を誘ってやまない伸びやかな白い尾根が左右にどこまでも続いている。
どっちへ行こうかな?とりあえず山毛欅沢山のピークを踏む。
反対側の小手沢の源頭部もたおやかという表現がぴったりの斜面だ。
ここで寝ても良いなぁ…一週間位うろうろしたいなぁ。
ピークから我が来たりし方向を眺めると、ムムムッ?なんじゃ?コゴミ沢方向から定規で書いたような直線的なジグザグの白い線がテン場付近まで上がってきているのが見える。
由々しきことに眉がつりあがります?!道?にしては直線すぎるし…戻って確認したが見つからなかった。
そのかわりゆるい斜面に雪がちゃんとついていてブッシュも薄いのでこの斜面が明日の下山に使えないか下見をする。
そろそろ良い時間になってきた。
ビールタイム!!プシュッ!山に自由あり。乾杯!
宴会山行と呼ばないでね。ここまで延々とヤブコギしてきたのよ。
夕焼けにまたまた乾杯!放歌高唱。だ~れもいない。うろうろ歩き回る…また飲む。
白血病と闘う純平ちゃん、元気になって絶対一緒に来てね!いいとこだから。
ポツポツ、ポツポツポツ…ぎょっ雨だ!ピカッ、雷まで!昨日のパターンかな?
しょうがないので、今日は店じまい。おとなしくテントに入るとしますか。
うるさいほどの鳥たちの歌に起こされる。
おっとっと、朝日が昇ってしまうよ! テントを開けてまだ紅い太陽を迎える。
シュラフに埋まったまま朝のお日様におはよう~。
さ~て、セオリー通り来た尾根をそのまま下山するか、甘~い誘惑の残雪斜面をトラバって昨日の尾根に乗るか…何が出てくるかちょっと不安だけど…往路では自重して尾根通しにしたのです。
赤布を回収しなければ!という責任感と甘い誘惑との葛藤。まして下山です。
やっぱり誘惑に弱い体質でした。 赤布はまたきっと回収しに来るね。
ザクザクと甘~い斜面に踏み出す。 やっぱり快適、キックが決まる。時々ピッケルが欲しくなるがブッシュが助けてくれる。
地形図にはないアップダウンが結構あるようだ。
標高1250くらいまで高度をキープするように気をつけて南に向けてトラバるが下向きの濃いブッシュや小さなアップダウンにまけてついつい降ろされてしまう。
すると、ザアザアと水の音が聞こえ小さな沢が現れた。
え~?地形図を穴のあくほど眺めてもそれらしきものが見当たらない。
「一体ここはどこ?!」 沢は小さいけれど意外と深く掘れていてわたれない。
またまた下に降ろされてわたれる箇所を探す。
沢はちょろちょろの流れに変わりそのうち伏流してしまった。
と、見渡す限りげんこつほどもあるある巨大なフキノトウが群生しているではありませんか!
しっかりつぼみが閉じているのにげんこつほどもあるフキノトウ!
ブッシュもほとんどないだだっ広い平地です。地形図を見るとぽっかり白くなってます。
おぉ、ここでもう一泊か二泊したい!こんないいところがあったとは! 「げんこつフキノトウ平」と勝手に命名。
なんてのんきなことを言っている場合じゃない。目指すべき南方向を見やれば濃~いブッシュ。
それでも掻き分けてちいさなうねりの上に乗ってみると今度は転げ落ちそうな斜面であった。しかも、また沢が行く手をふさぐ…え?一体本当にここはどこだ?
さてはトラバり過ぎたか?と疑心暗鬼に陥ってしまう。
「落ち着け!」これが我が親分、深瀬会長の教えである。
ロープもあるしなんとかなるさ。 まあ、落ち着いて巨大げんこつフキノトウなぞつんでみる。
空身で偵察すると下方にはそれなりの沢があり、どうやらコゴミ沢と思えた。
地形図には現れないアップダウンやこの時期特有な雪解け水の流れなど、惑わされる。
確信はまだ持てないがあれこれ考えた結果、沢に降りることにした。
コゴミ沢の途中まで下から道が伸びているとの情報もあったので。
さあ、沢にやっと下りました。第二核心部!
本沢との出合も確認しコゴミ沢であると確信。 小さな沢ですが雪代の沢です。地形図にある道の表示は???道はみつかりません。 何度も何度も渡渉させられます。沢靴であれば雪代といっても躊躇無く水に入ることもできますが、冬靴ではねえ…何度靴を履き替えウェットソックスになったことか…。ほとほと嫌気がさしてソックスのまましばらく歩いたり(痛いの!)、靴のまま水に入ろうかと真剣に考えたり…面倒です。うんざりです。
下山時間の半分は履き替えに要した時間です。
いらだちながら履き替え終わっていざわたるぞ!とザックを背負うと足元に4本の小さなウドが。
この忙しい時にしょうがないなぁと、重いザックを下ろしウドのお世話をしたり。
ちなみにコゴミ沢というだけあって太いコゴミがたくさん出ているが、時間にも心にも余裕がないため残置。われながらアッパレである?
時々急斜面を巻かされたりもします。 ブッシュはあるけど思わずロープでも出したくなるような傾斜と高さです。 雪がついていればブロック雪崩が怖いところでしょう。
げんなりしながらやっと出合に到着。予定の倍以上時間がかかり12時ちょい過ぎです。
今回フリートレックを持って来るか悩みましたが、持って来てたらえらいことでした。
まだ雪山の経験が少なく、読みが浅く判断が悪い!もっと修行しよう!
バスを待っているとご親切なことに風呂まで送って下さるという車が… 神奈川にお住まいのご夫婦です。
ご主人はここ安越又でお生まれになったそうです。 思いがけずご親切にしていただき、あたたかい思い出がまたひとつ。
目黒さん、ありがとうございました!
会津って本当にいいですねぇ。残雪の会津を愛してしまったようです。
通ってしまうに違いない。
帰ってザックをあけたら、コゴミやら何やらごっそり出てきました。
あれ?いつとったんだろ?人間の習性ってこわいですねぇ(汗)
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